日本内科学会雑誌
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肺塞栓を合併したminor anomaly型多発性骨髄腫の1例
戸塚 忠政草間 昌三望月 一郎倉石 安男田中 貴小野 秀正伊藤 公夫金井 正光
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1968 年 57 巻 11 号 p. 1396-1402

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抄録

症例は57才家婦.昭和40年6月より右胸痛が現われ, 41年3月には咳嗽,喀痰,前胸部痛および右肩胛痛が加わり同年8月23日戸塚内科に入院した.体格栄養中等度,脈拍整,加圧160/80mmHg.瞼結膜は軽度貧血性で,出血斑や浮腫を認めず,リンパ節の腫脹もない.心音純.胸部では左側下部に軽い濁音を認め呼吸音も減弱している.検査所見では血色素72%,白血球数6,800,その百分率では2%の骨髄腫細胞を認めた.骨髄像では骨髄腫細胞が98.6%を占め,電顕像では骨髄腫細胞の外核膜近くに腫蕩細胞に出現しやすいといわれるfibrillar formationが認められた.尿蛋白は10mg/dl以下である.胸部X線像では右鎖骨に骨折を認め,肋骨影は淡く,頭骨X線像に打ち抜き像が認められた.血清蛋白7.0g/dl, alb 70.0%, α1-glb 3.7%, α2-glb 11.0%, β-glb 8.0%, γ-glb 7.3%で,免疫電気泳動にてfast moving IgAを証明したがBence-Jones蛋白体はみられなかつた.これらの所見から本例はMiA型多発性骨髄腫と診断した.胸部X線像で左下肺野に均等陰影と胸水が証明され,その病因解明が難かしかつたが, X線所見ならびに心電図でSI, QIIIが著明, V1でP2相性でrsR'を示し, V1 V2でRの増高, T陰性などの所見から肺塞栓の合併と診断した.本例ではparaproteinも少なく,凝固機能も正常であつたことから,肺塞室栓の原因は病的骨折に伴なつた脂肪または骨髄組織によるものと考えられた.治療として抗腫瘍薬と蛋白同化ホルモンを用い,緩解を得て経過観察中である.

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