日本内科学会雑誌
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同胞にみられた先天性第V因子欠乏症(パラ血友病)の2例
丹呉 幹彦氏家 昭石川 喜年安河内 太郎
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1965 年 54 巻 7 号 p. 816-820

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抄録

同胞にみられた先天性第V因子欠乏症の2例を経験した.症例1. 17才,男.鼻出血を主訴として来院.既往症に6才のとき,歯肉腫脹のため切開抜歯したところ,出血がみられ輸血を要するほどであつたという.その後,時折,鼻出血を経験しているが,血尿,皮下出血,関節血腫等はなかつた.一般検査では末梢血液像,肝・腎機能,屎尿,胸部X線像,心電図等に全く異常を認めない.凝血学的検査の結果はつぎの如くである. (1)出血時間,全血凝固時間はともに輕度延長し, (2) Ca再加時間は中等度延長, (3)プロトロンビン時間は22.0~25.0秒と延長,第V因子活性は5.5~12%と著明な活性低下を示したが,プロトロンビン濃度および第VII因子複合体活性は正常であつた. (4)血漿フィブリノーゲン量および血漿線溶能は正常値を示した. (5)トプ形成能低下を認めた. (6)VK1およびε-ACAは第V因子に影響を与えなかつた.症例2. 13才,男.症例1の弟,以前に輕度の鼻出血があつたのみで,著明な出血性素因はなかつたという.凝血学的検査の結果は症例1とほゞ同程度のものであつた.家族歴では,両親は従兄妹同志の血族結婚であるが,出血傾向はなく,両親および長兄の凝血学的検査でも異常を認めえなかつた.

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