2016 年 105 巻 1 号 p. 105-111
肺癌の最大の危険因子は喫煙であるが,最近は喫煙と関連が薄い,肺癌発生に深く関与している遺伝子異常(driver mutation)が次々と報告されている.これらに対する分子標的薬が開発され,個別化治療が登場したことにより,この 10 年で肺癌の化学治療は大きく進歩した.現在は,耐性獲得後の治療や比較的稀な遺伝子異常を伴う肺癌に対する検査・治療の開発が課題となっている.一方,早期発見にはがん検診の受診が重要である.我が国では成人40歳以上に対し,年1回の胸部X線検査による肺がん検診が実施されているが,その有効性は限られている.最近は低線量 CT による肺がん検診の有効性が示されたため,今後の肺がん検診のあり方を考える必要が出てきた.また,肺癌に伴う症状を認めた場合は速やかに医療機関を受診することが望ましい.症状の中でも2週以上長引く咳は頻度が高く,受診が遅れがちであるため,特に啓発が必要である.