実験社会心理学研究
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原著論文
ダイナミック社会的インパクト理論の予測する態度の自己組織化の実証:コンピュータ・コミュニケーションを用いた実験的研究
森尾 博昭
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2007 年 47 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

ダイナミック社会的インパクト理論(DSIT)は個人の間の社会的影響過程の結果,集団レベルでの自己組織化現象として,ばらつきの減少である合併と空間的な収束であるクラスタリングが生じると予測する。本研究では,この予測の実証の試みとして,Latané & L’Herrou(1996)の用いたコンピュータを通じたコミュニケーション(CMC)のパラダイムを拡張し,他者からの影響を促進するような教示を行わない,より一般的な社会的影響過程のもとでもDSITの予測が成り立つかどうか検証した。実験は5週間の間行われ,参加者は週に1回,他の参加者と意見の交換を行った。個人レベルの分析では,2つの話題のうち,一つの話題で他者からの影響力が有意であった。集団レベルでは,合併は観察されなかったが有意なクラスタリングが観察された。本研究は,先行研究における制限を取り除いた上でも,CMCによる実験において,個人間の社会的影響過程が観察されること,またその結果としてクラスタリングが生じることを実証した。また電子掲示板などで見られる弱い社会的影響過程の結果,合併を伴わずにクラスタリングが生じる可能性も示唆された。

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© 2007 日本グループ・ダイナミックス学会
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