分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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フミン酸と有害金属イオンの錯生成反応に及ぼす鉄(III) イオンの影響
山本 祐平喜多 郁弥磯野 成美今井 昭二
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2017 年 66 巻 12 号 p. 875-883

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抄録

環境中の主要な有機配位子である腐植物質の一種であるフミン酸について,金属イオン(Be2+,Ni2+,Co2+,Cd2+,Pb2+)-フミン酸錯体の見かけの錯生成定数(log β)及び静電的影響を排した真の錯生成定数(log KMA)をFe3+イオン競合条件下において決定した.Ni2+イオン及びCd2+イオンはFe3+イオン濃度増加に伴いlog βが減少し,競合の影響を受けることが示された.Co2+イオンはFe3+イオン濃度増加に対しlog βはあまり減少せず,競合の影響が小さいことが示された.Pb2+イオンはほとんど競合の影響を受けず,Fe3+イオンと異なる結合サイトに結合していることが示唆された.錯平衡モデルを用いて求めたlog KMAを基に,Fe3+イオン競合下での金属イオンの錯体生成量を見積もり,実測値とモデル計算値の比較を行った.モデル計算値はFe3+イオンの競合影響を過大評価する傾向にあることが示された.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2017
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