2011 年 60 巻 1 号 p. 1-9
水は電極-電解液界面でどう振る舞うであろうか? これは電気化学で最も基本的でかつ重要な研究課題の一つである.Helmholtzによる1853年の電気二重層の提案から始まった電極界面構造の研究は,1960年代になって,水は界面の電場に沿って配列し,電位(表面電荷)によってその配向を変化させる,という現在一般的に受け入れられているモデルに到達した.しかし,これを直接確認する手段がなく,詳細は永年不明のままであった.最近の計算化学と電極界面のその場測定方法の進展により,電極界面を分子レベルでより詳細に検討することが可能になり,新しい知見が得られるようになってきている.本稿では,表面増強赤外分光(SEIRAS)による解析を中心として,最近の進展の一端を紹介する.