分析化学
Print ISSN : 0525-1931
水溶性ポルフィリンの酸解離平衡の測定とその分光特性
西川 友賀森重 清利重松 恒信西川 泰治
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1988 年 37 巻 6 号 p. 284-291

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抄録

水溶性ポルフィリンの各種pH溶液における吸収スペクトルを用いて,酸解離平衡定数の測定を行い,これより各化学種を同定し,その分光特性を検討した.ポルフィリンのQバンドはソーレバンドに比べてpHにより顕著な変化が現れ,これらのスペクトルを用いてピロール環水素の結合・脱離に基づく5種の化学種(PH42+,PH3+,PH2,PH-,P2-)の存在pH領域を決定した.各ポルフィリンのpK値は次のようであった.α,β,γ,δ-テトラキス(4-N-メチルピリジル)ポルフィン:pK4=1.17,pK3=2.10,pK2=5.99,pK1=11.27;α,β,γ,δ-テトラキス(4-N-トリメチルアミノフェニル)ポルフィン:pK4=0.79,pK3=3.00,pK2=7.64,pK1=9.54;α,β,γ,δ-テトラフェニルポルフィントリスルホン酸:pK4=3.57,pK3=4.88,pK2=5.15,pK1=8.31.更にこれらの化学種の蛍光特性を検討したところ,寿命(τf)について顕著な変化が現れた.このように水溶性ポルフィリンの各化学種の分光特性の特異性はピロール環窒素のプロトリシスに起因することを明らかにした.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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