林業経済研究
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新潟県上越市不動地区における集落合併の要因
集落財政の収支に着目して
佐藤 周平 山下 詠子竹本 太郎
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2022 年 68 巻 2 号 p. 1-16

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抄録

本稿の目的は新潟県上越市名立区不動地区を構成する3集落が2020年に合併した背景を明らかにすることである。集落の広域化は行政を中心に議論されてきたが,具体的な事例検討は見当たらない。同地区が保管する約60年間分の会計書類を用いて,集落財政の仕組みと推移を分析した。同地区の集落財政は「三ケ字連合会」が用水や道路の管理と住民への賦課金の賦課比率(「割元」)を司る一方で,賦課金徴収の実務(「皆済勘定」)は各集落が担ってきた。しかし,自治体等からの資金(「雑収入」)と多面的機能支払交付金の流入により,賦課金の徴収は縮小された(「ゼロ会計」)。ゼロ会計によって,農地などの面積を基準とする「地租」を用いた賦課方式が中断したこと,賦課金の徴収主体としての集落の役割が後退したことが合併の一因であった。合併後の新たな町内会は均等割を基本とする。ただ,合併に踏み切った根底には集落の過疎に対する危機感も読み取れるため,住民による自生的な再編とも捉えられる。今後の課題は,集落の広域化を財政以外の観点からも検証すること,合併後の内部集団の動向を把握すること,ストックとしての共有林と集落財政の関係を把握することである。

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© 2022 林業経済学会
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