2011 年 37 巻 p. 273-284
大阪市北区に現存する戦前長屋群を対象に,長屋居住における生活文化の価値を明らかにし,持続的居住を実現する再生手法を実践的社会実験によって示した。(1)居住世帯の変遷と増改築の経歴を明らかにした上で,居住継承が困難になっている長屋の住生活と居住空間の今日における価値と課題を明示した。(2)伝統的木造住宅に適した耐震改修工法を初めて長屋で施工し,その有効性を検証するとともに,資金面からみた借家経営継続の展望も示すことができた。(3)全面的な改修を行った住戸では,減築による裏庭の復活をはじめ,長屋本来の特性を生かして再生した。その結果,再生長屋には多様な若年世帯が入居し,入居者による住生活評価を通じて,長屋における持続的居住を実現できる将来展望を示した。