人間・環境学会誌
Online ISSN : 2432-0366
Print ISSN : 1341-500X
東日本大震災からみえる建築社会研究の役割(<特集1>建築社会研究は東日本大震災とどのように向き合うのか)
小松 尚
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2011 年 14 巻 2 号 p. 39-42

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抄録

東日本大震災は、建築とその背後にある社会システムの構造のあり方や関係について、検討を迫る契機となった。災害という最も危機的な状況下での生活の質をどのように確保し、また回復するのかについてのスタンスやアプローチは、被災後だけでなく、少子高齢化と人口減が進むわが国の建築と生活、そして社会のあり様を再考し、議論と方策を共有する方向へと向かう必要がある。本稿では、(1)まず東日本大震災後に供給された仮設住宅団地の課題を取り上げ、仮設住宅の事後的な改善とともに、入居者の生活の質(QOL)の観点からの検討と今後に向けた提言が急務なこと、(2)地域社会のサステイナビリティの観点から、少子高齢化と人口減社会における被災後の住まいの供給の仕方に関する多様な戦略を議論する必要があること、(3)そして、眼前に存在する建築とそれを成立させている社会システムを統合的に捉え、問題提起することが建築社会研究の役割であり、それが今まさに求められていることを改めて指摘する。

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© 2011 人間・環境学会
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