遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
総説
多発性内分泌腫瘍2型小児患者の甲状腺髄様癌と医療状況について~日本小児内分泌学会全国調査からみえた本邦における小児期予防的甲状腺全摘術/極早期摘出の現状~
松下 理恵 長崎 啓祐綾部 匡之三善 陽子金城 さおり春名 英典井原 健二長谷川 奉延位田 忍大薗 恵一南谷 幹史
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 20 巻 3 号 p. 117-123

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抄録

多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia;MEN)2型はRET遺伝子の病的バリアントを原因とする遺伝性腫瘍症である.MEN2型の遺伝性甲状腺髄様癌はほぼ完全浸透率を示す悪性腫瘍で乳幼児期からも発生し,再発が多いため早期発見と治療が重要である.遺伝性甲状腺髄様癌は,海外では予防的甲状腺全摘が推奨されている.一般的に幼少期の甲状腺手術の合併症リスクは高いが,幼少時の甲状腺全摘のみの予防的甲状腺全摘/極早期摘出は,高年齢の進行段階で中央区域以上のリンパ節郭清を伴うよりは手術合併症が少ないことが複数の調査で示されている.

日本では予防的甲状腺全摘が保険で認められていない.費用や医療環境も鑑みると,本邦で再発も手術合併症も減らし生涯の質を向上させるためには,現時点ではRET遺伝子の病的バリアント保有者はカルシトニン値上昇後に極早期甲状腺全摘出を行うことが現実的な選択肢であろう.

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© 2020 一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
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