日本作物学会紀事
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直播栽培における日印交雑水稲の生育と収量 : 乾田直播, 畑栽培での日本型水・陸稲との比較
尹 祥翼和田 義春前田 忠信三浦 邦夫渡邊 和之
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1997 年 66 巻 3 号 p. 386-393

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抄録

直播や畑栽培に適した多収性イネ品種開発の基礎資料を得るため, 既存の多収性品種である日印交雑品種(統一系品種)の直播・畑栽培適性を調査した. 1994年と1995年の2か年にわたり圃場試験を行い, 畑に直播した畑直播 (DU) 区, 乾田に直播し出芽後入水した乾田直播 (DL) 区および対照として水田移植 (TL) 区を設け, 日印交雑水稲 Suweon 287 と Suweon 290 の生育と収量を熟期の比較的近い日本の水稲コシヒカリ, 陸稲トヨハタモチと比較した. 直播区における日印交雑品種の出芽は, 2か年を通じて日本型水・陸稲より安定して高かった. 直播下ではいずれの品種もTL区に比し最高分げつ期, 開花期が1~2週間遅延した. 開花期の草丈はDU区で高くなったが, 伸長程度は日本型品種では大, 日印交雑品種では小であリ, 特に日印交雑品種は下位節間長が短かった. 開花期までの乾物生産は, 年次・品種を通じて DU>TL>DL の順どなった. 開花後の乾物生産はTL区で最も高く, コシヒカリは DU 区で, トヨハタモチは DL 区で著しく小となった. 日印交雑品種は直播条件下でも低下が小さく, 開花後の乾物生産が高かった. 収量は, 日印交雑品種が年次間変動はあるものの直播や畑栽培の下で日本型品種より高くなった. これは, 日印交雑品種は直播や畑栽培条件下でも大きなシンクを確保し, さらに同一のシンクサイズの下では日本型品種より高い登熟歩合を維持したためであった. 以上のように, 日印交雑品種は直播や畑栽培に対し高い適性を持っており, 今後の直播用品種や陸稲品種の改良のために有用な形質を持つと判断された.

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