日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
中国産ハイブリッドライスの物質生産に関する研究 : 第2報 収量生産特性
宋 祥甫縣 和一川満 芳信
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 59 巻 1 号 p. 29-33

詳細
抄録

中国産ハイブリッドライス (F1ライス) の多収性要因を明らかにするため, 前報で供試した同一品種を対象に, 収量構成要素の解析と玄米収量を構成する同化産物の由来源を中心に検討した。総穎花数と玄米収量との間には高い正の相関関係があり, F1ライスの多収性は普通稲品種に比べて格段に多い総穎花数に由来していることが明らかになった (第1表, 第1図) 。F1ライスの総穎花数はその構成要素からみて1株穂数より1穂穎花数が著しく多いことに由来していた (第1表) 。F1ライスは穎花数が多い割合には高い登熟歩合 (80%) を示したが, これは登熟期間中のソース (LAI) とシンク (穎花数) の比が在来品種を除く普通稲品種に比べて大きいことが一つの要因と考えられた (第2表) 。玄米収量は出穂期前に蓄積された同化産物と登熟期間中の光合成産物によって決定されるが, 前者と玄米収量との間には高い正の相関関係が認められた (第3図) 。F1ライスの玄米収量は蓄積同化産物からの転流分に依存する割合が普通稲品種に比べて大きく, これが登熟歩合向上のもう一つの要因と考えられた。以上から, F1ライスの多収性は総穎花数が多いことに集約されるが, 穎花数が多いにもかかわらず登熟歩合が落ちなかった原因として, 穎落数に釣り合ったLAIが登熟期間中維持されたこと, 出穂期前に蓄積された同化産物の転流分に依存する割合が多かったことによると結論される。

著者関連情報
© 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top