日本作物学会紀事
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F1イネ幼植物の養分吸収におけるヘテロシス
一井 眞比古中村 雅彦
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1990 年 59 巻 1 号 p. 140-145

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抄録

12 F1雑種およびそれらの両親6品種からなる18系統 (品種を含む) のイネ (Oryza sativa L.) を供試し, それらの25日苗における養分吸収能力, とりわけNH+4-N, NO-3-N, PおよびK吸収速度 (mg・plant wt g-1・h-1) に着目し, F1雑種植物におけるヘテロシスの発現について検討した。結果の概要は以下のとおりである。(1) 植物体の大きさに係わる形態形質ではヘテロシスがほとんど認められなかったが, いずれの養分要素の吸収速度においてもきわめて大きなヘテロシスが認められた。(2) 吸収速度はK, NH+4-N, NO-3-N, P の順に小さくなり, KではPの5倍以上の吸収速度を示した。このような関係はF1雑種または両親品種のいずれにおいても同じであった。(3) 吸収速度におけるヘテロシスはNO-3-N, P, NH+4-N, Kの順に小さくなり, 最も大きいNO-3-Nのヘテロシス程度は約80%, 最も小さいKで約30%であり, 養分要素によってヘテロシスの大きさが著しく異なった。(4) 吸収速度のヘテロシス程度と植物体重および植物体重のヘテロシス程度との相関はいずれの養分要素においても有意でなかった。(5) NH+4-N吸収速度とK吸収速度間, および両吸収速度におけるヘテロシス程度間の相関は有意で, かつ正であった。(6) 以上の結果は, 養分吸収能力のような生理形質におけるヘテロシスが形態形質におけるヘテロシスに先行して現れること, 並びに養分吸収能力におけるヘテロシスはF1雑種植物の大きさとは無関係のF1雑種固有の高い生理活性に依存することを示唆している。

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