産業衛生学雑誌
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50人未満小規模事業所における労働衛生管理の実態(第2報) : 有害作業および筋骨格系への負担作業の管理状況
熊谷 信二平田 衛田淵 武夫田井中 秀嗣安藤 剛織田 肇
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2000 年 42 巻 5 号 p. 193-200

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抄録

我が国の小規模事業所における有害作業および筋骨格系への負担作業に対する労働衛生管理の実態を明らかにするため, 大阪市近傍の一都市の一部地域において質問紙調査を実施した.調査した有害作業因子は, 粉じん, 有機溶剤, 鉛, 特定化学物質, 酸欠, 騒音, 振動工具, 電離放射線, 高温・低温, 高圧室内.調査した筋骨格系への負担作業因子は, コンピューター・ワープロ, 立ちっぱなし, 重量物取扱い, 不良姿勢, 手腕への過重な負担である.回答事業所数は765であった(回収率69.3%).騒音, 粉じん, 振動工具および有機溶剤のある事業所はそれぞれ14.0%, 10.7%, 6.9%および6.4%であり, それ以外の有害作業のある事業所は3%未満であった.特殊健康診断および作業環境測定はそれぞれ0.0%〜26.7%および0.0%〜13.3%の事業所で実施されていた.作業環境管理は0.0%〜40.2%で実施されていた.立ちっぱなし作業およびコンピューター・ワープロ作業のある事業所はそれぞれ42.0%および35.8%であり, それ以外の負担作業のある事業所は30%前後であった.特殊健康診断は3.0%〜5.1%の事業所で実施され, 負担軽減対策は20.4%〜25.3%の事業所で実施されていた.特殊健診および作業環境測定を実施していない主な理由は「法律を知らなかった(19.7%, 30.2%)」および「時間がない(16.0%, 23.3%)」であった.有害作業に対する対策を実施していない理由としては「対策案がない(9.0%)」「費用が高い(7.4%)」「時間がない(6.4%)」および「相談できる人がいない(5.9%)」であった.負担作業に対する対策を実施していない理由は「対策案がない(15.6%)」および「時間がない(10.2%)」であった.したがって, 労働衛生管理の重要性に関する事業主への啓発が必要である.また, 低コストで実現可能な対策の提案も必要である.

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© 2000 公益社団法人 日本産業衛生学会
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