産業衛生学雑誌
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調査報告
わが国の企業におけるeラーニングとこれによる労働安全衛生教育の利用状況,ニーズおよび関連要因
三橋 利晴高尾 総司堤 明純川上 憲人
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2006 年 48 巻 5 号 p. 183-191

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抄録

わが国の企業におけるeラーニングとこれによる労働安全衛生教育の利用状況,ニーズおよび関連要因:三橋利晴ほか.岡山大学大学院医歯学総合研究科衛生学・予防医学分野―わが国の企業におけるeラーニングとこれによる労働安全衛生教育の利用状況,ニーズおよびその促進・阻害要因を明らかにするために,従業員1,000人以上と同999人以下の企業それぞれから500社を抽出し,質問票による調査を実施し,有効回答した合計134社(回答率13%,企業規模それぞれ56社,78社)のデータを分析した.全体では19%の企業がeラーニングを導入済み,さらに16%の企業が導入を検討中であった.しかしeラーニングによる労働安全衛生教育の実施は従業員1,000人以上の企業でも7%,999人以下の企業では3%未満と低かった.一方eラーニングによる労働安全衛生教育についてはどの対象者,コンテンツでも8~9割の企業が受講させることを考えると回答していた.eラーニングの利点としては「いつでも受講できる」,「どこからでも受講できる」が,導入の問題点としては「コスト」,「パソコンが1人に1台ずつない」,「学習効果が不明確」であった.しかしeラーニングの導入済みあるいは検討中には,「受講状況が把握できる」が有意な関連を示した.「優良なコンテンツが得られない」という問題点は,eラーニング導入済み・検討中の企業に多かった.eラーニングによる労働安全衛生教育はまだ導入している企業は少ないが,そのニーズは高い.eラーニングおよびこれによる労働安全衛生教育の推進のために,eラーニングのシステムおよびコンテンツの改善,導入コストの低減,企業のeラーニング導入インフラの改善が必要と考えた.
(産衛誌2006; 48: 183-191)

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