国際ビジネス研究
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研究論文
コスモポリタニズムがバラエティシーキングとノベルティシーキングに及ぼす影響
─最適刺激水準理論に基づく経験的研究─
古川 裕康李 炅泰
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2020 年 12 巻 2 号 p. 35-47

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抄録

本研究の目的はコスモポリタニズム(COS)がノベルティシーキング(NS)、ならびにバラエティシーキング(VS)へ与える影響を検証することである。近年、国際的な観点を持ち異文化から積極的に学び吸収しようとする消費者が出現している。このような消費者の傾向はコスモポリタニズムと定義されており、オープンマインドであり、多様性を尊重し、国境を超える消費活動を行う特徴が確認されてきた。

COS の特徴を考慮すると、彼らは自国製品とは違う特徴を持つ、新奇かつ多様な外国製品を試すことに前向きであることが容易に想定できる。その点で、COS は異文化や外国の製品に対する新奇性と多様性といった探索的行動を導くと考えられる。ところが、それに関する実証研究は少なく、COS が購買行動における新奇性ならびに多様性の追求と具体的にどのような関係を持つのかに関しては、ほとんど知られていない。消費者行動における新奇性と多様性の追求は、最適刺激水準(optimum stimulation level: OSL)理論と関連して頻繁に論じられる。したがって、本稿ではCOS と新奇性(NS)と多様性(VS)追求行動の関係性をOSL 理論に基づきながら検証した。

検証には806 名の日本人消費者サンプルを用い、被験者には日用品とスマートフォン端末に関する消費行動について回答してもらった。分析の結果、COS が高まる程、NS が高まることが明らかとなった。一方、COS とVS については有意な関係性が確認できなかった。ただし、自国製品選好が低いグループに限っては両者の間に正の関係性が確認された。更に本稿ではOSL とNS ならびにVS 間の関係、そしてNS とVS の関係についても正の関係性が確認された。

母国市場と進出国市場における消費者の隔たりを検証しようとする既存の枠組みでは、COS の高い消費者の存在を十分に説明しきれない。本点を踏まえ本稿はCOS とNS ならびにVS の関係性について、OSL 理論を内包しながら検証を実施した点に意義がある。OSL 理論はこれまで多くの研究蓄積があるものの、COS の概念を用いて国際的な文脈で捉えられることはこれまで無かった。本稿はOSL 理論の国際ビジネス領域における拡張的検討と位置付けられる。

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