2022 年 71 巻 5 号 p. 397-401
皮膚肥満細胞症(CM)の多くは,小児に生じ,予後良好であり,思春期までに皮膚病変は自然消退する.海外の小児に生じたCMのまとめによると,c-KITのD816Vの遺伝子変異が36%(18/50例)にみられ,特にDiffuse cutaneous mastocytosis(DCM)では20%にみられる.小児のDCMでは全身性肥満細胞症に移行したとする報告があるが,一方で,自然消退する症例やc-KITの遺伝子変異が確認できない症例も散見される.今回,11カ月の男児に生じた,c-KITに遺伝子変異がないDCMの1例を経験した.過去の本邦小児DCMの報告例をまとめ,これまでに当科で経験した小児のCM例とともに報告する.本症例では診断後,3歳まで抗ヒスタミン薬の内服を継続し,アナフィラキシーなどの合併症はみられていないが,水疱の新生を繰り返している.本邦ではこれまでD816Vの遺伝子変異がある小児DCM報告例はなく,海外と比較してD816Vに変異がある小児のDCMが少ない可能性がある.