2022 年 71 巻 2 号 p. 130-134
症例は74歳の男性.左胸水貯留で発症し,良性石綿胸水や結核性胸膜炎が疑われた.胸水中のADAが高値であったため,結核性胸膜炎として診断的治療が行われたが,経過中に右胸水貯留,皮膚・粘膜病変,白血球減少症,発熱を生じた.皮膚生検の病理はsystemic lupus erythematosus(SLE)に合致した.全薬剤中止後も臨床所見が改善しなかったため,ステロイド薬を開始したところ各種所見は改善を示し,高齢発症SLEを強く疑った.高齢者における胸水貯留ではループス胸膜炎も鑑別に挙げるべきである.また,高齢発症SLEと薬剤誘発性ループスは臨床経過から慎重に鑑別する必要がある.