システム農学
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研究論文
土壌水分シミュレーションによる節水野菜栽培技術の適用性評価
小田 正人諸泉 利嗣
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2007 年 23 巻 3 号 p. 245-250

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抄録

東北タイ・コンケン県ノンセン村で、雨季に貯留した土壌水分を利用する乾季のトマトの節水栽培法が実践されている。この栽培法では、標準500mm余りとされるトマトのかんがい水を5mm以下に抑えられる。この栽培技術は土壌水分に依存していると考えられたので、本研究では、土壌水分シミュレーションを用いることにより技術の妥当性を理論的に検証するとともに、異なる土壌タイプにおける適用性を検討した。具体的には以下の通りである。シミュレーション・コードに農業分野に利用実績が多いHYDRUS-1Dを用いた。まずシミュレーションのキャリブレーションとして、雨季の最終降水時(2004年9月23日)の土壌水分を飽和状態と仮定し、これを初期条件として、地表面蒸発によって節水栽培試験開始時(2004年12月1日)の水分に一致するよう、乾砂層の地表面蒸発抑制パラメータを調整した。その結果、この条件下では、期間中の積算可能蒸発量420mmに対して実蒸発量の計算値は150mm程度となり、土壌表面の乾燥に伴って形成される乾砂層による蒸発抑制効果が十分であることがわかった。つぎに調整したパラメータを用いて収穫終了までの実測の土壌水分を再現できるかどうかを検討したところ計算値は実測値の傾向を十分に再現した。最後に、土壌タイプのみを東北タイの代表的な4つの土壌タイプ(Nam Phong、Ubon、Roi-Et、Phimai)におきかえてシミュレーションを行い、土壌の水分供給量を比較することで、節水栽培法の適用性を評価した。その結果、Roi-Et、Phimaiは、技術が開発されたNam Phongよりも水分供給量が大きく、水分供給量が小さかったUbonについてもその差は僅かであったことから、節水栽培技術は東北タイの広い範囲の土壌タイプに適用性があると判断された。

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© 2007 システム農学会
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