日本草地学会誌
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表面播種におけるイネ科牧草の発芽・定着 : 6.種子根が土壌中に進入を始めた寒地型牧草幼苗の引き抜き抵抗力について
森田 脩後藤 正和江原 宏
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1994 年 40 巻 2 号 p. 198-204

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抄録

寒地型牧草型8種14品種を,相対湿度約100%,25℃の恒温条件で,水田黄色土壌の表面に播種し,草種別に,立ち上がり型で種子根が土壌中に進入した幼苗の引き抜き抵抗力と種子根の長さを測定した。一部の草種については,引き抜いた時に種子根の周りに固着した土塊の大きさも調査した。また,火山灰性黒ボク土壌の表面にトールフェスク(ケンタッキー31)を播種して,引き抜き抵抗力や土塊等を測定し,水田黄色土壌のそれらと比較した。そして,草種と土壌の種類の面から,種子根が進入を始めた幼苗が土壌表面に固定される力について検討した。1.寒地型牧草のうち,立ち上がり後約1日で,オーチャードグラス,ペレニアルライグラス,イタリアンライグラスの3草種は土壌中へ種子根が4〜6mm進入し,引き抜き抵抗力は8〜10gとなった。また,トールフェスクとスムーズブロームグラスの進入根長は2〜3mmであったが,引き抜き抵抗力はこれら草種と差が見られなかった。一方,小粒で種子根が細くて切れやすかったケンタッキーブルーグラスやチモシーは約2mm進入し,引き抜き抵抗力は4g前後であった。2.土壌中に進入した草種別の平均種子根長と平均引き抜き抵抗力との間にはr=0.757(p<0.01)と有意な正の相関が認められ,進入種子根長が長い草種ほど引き抜き抵抗力は強くなった。また,土壌中へ進入した種子根が長いほど,固着土塊の容積が大きくなった。3.火山灰性黒ボク土壌表面で発芽したトールフェスクの幼苗は,水田黄色土壌のそれより種子根が長く進入し,固着土塊の容積が大きかったにもかかわらず,引き抜き抵抗力は同程度か,やや弱かった。4.以上から,寒地型牧草の幼苗の引き抜き抵抗力は,土壌中に進入した種子根の長さと,根鞘毛および種子根から発生した根毛とが固着してつかんだ土塊の大きさと密接に関係していた。そして,種子根が土壌中へ3mm以上進入した幼苗の引き抜き抵抗力は根鞘毛固着力の3倍以上に強化された。

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© 1994 著者
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