2006 年 21 巻 1 号 p. 83-88
筆者らは,CSCLシステムであるKnowledge Forumを活用した小学生のための科学教育カリキュラムを開発・評価している.本研究では,遺伝子組換え食品問題に対する社会的意思決定を扱うカリキュラムを,知識構築に関するデザイン原則のひとつである認識主体性の観点から改善し,有効性を評価した.評価の指標は,この問題に対する個人的意見であり,単元開始時,中盤,終了後の3時点で測定し,学習の進行に伴う変化を改善前のカリキュラムでの結果と比較した.その結果,改善後のカリキュラムでは,単元の中盤から提案型の意見が出現し,単元後にはほぼ全員が,条件や代替策を示した賛成意見を記述した.児童の認識主体性を考慮した授業デザインの変更により,共同体にとって価値あるアイディアの創出という知識構築のレベルを,さらに向上させることができた.