日本惑星科学会誌遊星人
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小惑星Phaethon探査提案(特集「月惑星探査の来たる10年:第二段階のまとめ」)
荒井 朋子春日 敏測大塚 勝仁中村 智樹中藤 亜衣子中村 良介伊藤 孝士渡部 潤一小林 正規川勝 康弘中村 圭子小松 睦美千秋 博紀和田 浩二亀田 真吾大野 宗佑石橋 高石丸 亮中宮 賢樹
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2012 年 21 巻 3 号 p. 239-246

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抄録

地球近傍小惑星(3200)Phaethonは,ふたご座流星群の母天体であるが,彗星活動は乏しく,彗星と小惑星の中間的特徴を持つ活動的小惑星(あるいは枯渇彗星)と考えられている.また,ふたご座流星群のスペクトル観測から報告されているナトリウムの枯渇及び不均質は,太陽加熱の影響よりも局所的部分溶融を経た母天体の組成不均質を反映している可能性が高い.部分溶融の痕跡を残す原始的分化隕石中に見られる薄片規模(mm-cmスケール)でのナトリウム不均質は,上記の可能性を支持する.従って, Phaethonでは局所的な加熱溶融・分別を経験した物質と,始原的な彗星物質が共存することが期待される. Phaethonは,太陽系固体天体形成の最初期プロセスを解明するための貴重な探査標的である.また,天文学,天体力学,小惑星・彗星科学,隕石学,実験岩石学などの惑星科学の多分野に横断的な本質的課題解明の鍵を握る理想的な天体である.本稿では,小惑星Phaethon及び関連小惑星の科学的意義と探査提案について述べる.

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© 2012 日本惑星科学会
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