日本繁殖生物学会 講演要旨集
第114回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR-32
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性周期・妊娠
黒毛和種経産牛の正常分娩に伴う子宮頸管熟化におけるコラーゲン組成に関連した変化
*山之口 瑛悟北原 豪小林 郁雄邉見 広一郎菱川 善隆CHOIJOOKHUU Narantsog山口 良二大澤 健司
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抄録

【目的】分娩に伴う頸管熟化には生理的な炎症反応を伴うこと,さらにⅠ型コラーゲンの変化が頸管熟化に関連することがヒトやマウスでは示唆されているが,牛では不明である。牛の臨床現場では長期在胎や陣痛微弱による難産と死産が問題となっており,このような問題を防ぐために頸管熟化を促進させる方法の開発と応用が期待される。そこで,本研究では牛における正常な子宮頸管熟化機構と関連する変化の一端を明らかにすることを目的として,妊娠後期から分娩までのコラーゲンの変化に注目した試験を実施した。【材料と方法】宮崎大学農学部附属牧場の2~14産目の黒毛和種経産牛14頭を供試した。人工授精から分娩までの日数は293±4(平均±SD)日であった。人工授精後200(±3)日,260(±3)日,274(±3)日,288(±3)日,以降7日間隔で分娩直前(0~6日前)まで子宮頸管組織をパンチ生検で採取,さらに子宮頸管粘液を用手で採取した。頸管組織はピクロシリウスレッド染色し,偏光顕微鏡で観察と撮影を行い,得られた画像を用いⅠ型コラーゲンを示す領域が組織の総面積に占める割合を画像処理ソフト(ImageJ)で算出した。頸管粘液はディフクイック染色で有核細胞400個に対する多形核好中球の割合(PMN%)を算出した。【結果】Ⅰ型コラーゲンの組織に対する割合は,初回採材(分娩の12~13週間前)時点で94.8%から最終採材時では72.5%と低下した(p<0.05)。頸管粘液中のPMN%は初回採材時に最も低く(0.01%),分娩4~5週間前までに22.0%と上昇(p<0.05)し,分娩1週間前までに最高値(50.9%)を示した。【考察】以上の結果より,牛の頸管熟化には頸管組織におけるⅠ型コラーゲンの減少が関与していることが示唆された。また,頸管粘液中のPMNの増加の後にコラーゲンが変化し始めていることから,PMNによる炎症とPMNが分泌するコラゲナーゼが頸管熟化に影響することが推察された。

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