日本繁殖生物学会 講演要旨集
第112回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-20
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精巣・精子
ストレス依存的な男性生殖機能障害に対するコーヒーチェリーの改善作用
*大葉 椋介宮崎 均
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抄録

【目的】夏季の高温・多湿環境は家畜の繁殖力を低下させる。これは夏季不妊と呼ばれ,食肉や鶏卵の安定供給の面で大きな問題である。スプリンクラー設置や地下豚舎の設立などの対策が存在するが,多額の費用が掛かるため全農家で採用されうるものではない。そこで,食機能を用いた簡便で経済的な対策法の提供し,不妊を一部でも予防することができればその意義は大きい。本研究で着目したコーヒーチェリー(以下CC)は先行研究において,マウスの皮質神経細胞における酸化ストレス由来のアポトーシス抑制作用や,スカベンジング能が報告されているが,生殖機能に対する作用は未解明である。そこで本研究では,暑熱ストレス依存的な雄の生殖機能障害に対するCCの改善作用を探査した。【方法】8 週齢の雄ICRマウスを対照区(室温)と暑熱区(42℃)に分けた。対照区にはコントロール群,暑熱区にはコントロール群とCC投与群を設け,CC投与群は200 mg/kg体重もしくは300 mg/kg体重となるように粉末飼料に混合し投与した。暑熱負荷後,(1)48時間後に精巣を摘出,ブアン固定液で固定後HE染色を行い,倒立顕微鏡下で観察及び測定を行った。(2)24時間後に精巣上体から精子を採取し,15分間培養後に精子解析システム(SMAS)を用いて精子濃度,運動率,速度等のパラメータ解析を行った。【結果】暑熱ストレスを負荷すると精巣内で多核化巨細胞の発現や精母細胞の脱落が認められ,それらを含む異常精細管の割合は有意に増加した。一方で,CC投与群においては異常精細管の割合を有意に減少させた。(2)暑熱区コントロール群において,精子の各種パラメータは有意に低下した。中でも,受精能が高い精子(progressive sperm)の割合を有意に減少させた。これに対し,CC投与群はこの progressive sperm の割合を有意に改善した。これらの結果から,CCは精巣及び精子を保護することによって,暑熱ストレス依存的な男性生殖機能障害に対する改善作用を示すことが示唆された。

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