日本繁殖生物学会 講演要旨集
第111回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-13
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性周期・妊娠
子宮内膜における免疫系は暑熱ストレスにより変化する
*酒井 駿介畑生 俊光山本 ゆき木村 康二
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抄録

【目的】分娩後ほぼすべてのウシは子宮腔への細菌侵入により子宮内膜炎を発症する。これに対し,子宮内膜細胞はIL-6およびIL-8を分泌し,主要感染部位である子宮内膜上皮層へマクロファージ(MΦ)および好中球を誘導することで細菌除去し,子宮内膜炎を治癒する。しかし,夏季に子宮内膜炎を発症した場合,症状が長期化すると報告されており,夏季不妊の一因として考えられる。本研究では,夏季の子宮内膜炎の長期化はHeat Stress(HS)による子宮内膜の免疫機能低下によると仮定し,冬季および夏季の子宮内膜組織におけるMΦおよび好中球の局在解析と,培養子宮内膜細胞を用いた,リポ多糖(LPS)刺激によるIL-6およびIL-8産生へのHSの影響を検討した。【方法】冬季および夏季に採取した子宮内膜においてMΦおよび好中球の局在を免疫組織化学およびギムザ染色により検討した。また,培養子宮内膜上皮および間質細胞にLPS添加後,38.5°Cまたは40.5°Cで培養し,IL-6およびIL-8遺伝子発現および上清中の濃度を定量的RT-PCR法もしくはEIAによりそれぞれ測定した。【結果】MΦは冬季の子宮内膜において上皮層付近に局在するが,夏季には子宮内膜全域に散在した。一方,好中球の局在は冬季と夏季で変化がなかった。また,38.5°Cで培養した上皮細胞においてIL-6およびIL-8遺伝子発現および分泌量はLPSにより有意に増加した。このIL-6増加はHSにより有意に抑制されたが,IL-8増加にHSは影響しなかった。一方,38.5°Cで培養した間質細胞においてIL-6およびIL-8遺伝子発現および産生量はLPS添加により有意に増加し,この増加はHSによって増強された。以上より,HSは子宮内膜細胞による好中球の誘引に影響しない一方,上皮細胞のIL-6産生を抑制し,間質細胞のIL-6産生を刺激することで上皮層へのMΦ誘導を抑制する可能性が考えられた。これにより夏季の子宮内膜炎症状を長期化させ,夏季不妊の一因となることが示唆された。

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