日本繁殖生物学会 講演要旨集
第108回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-119
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臨床・応用技術
ウシにおける最終糖化産物の蓄積状況の検討
*美辺 詩織松山 秀一木村 康二
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抄録
【目的】乳牛では,高泌乳化に伴い穀類依存比率を高めた飼養体系に移行している一方で,受胎率は減少の一途を辿っている。近年,体内に過剰に摂取された余剰の糖などのエネルギー物質は非酵素的にタンパク質と結合して最終糖化産物(Advanced Glycation End Products:AGEs)を生み出し,このAGEsが様々な疾患や臓器・組織の老化を引き起こすことが明らかとなってきた。乳牛の低受胎には高エネルギー飼養体系により蓄積したAGEsが関与している可能性も考えられるが,これまで家畜における血中AGEs濃度を測定した報告はない。本研究ではウシの体内におけるAGEsの蓄積状況を把握するとともに,飼養形態や栄養状態との相関を明らかにすることを目的とした。 【方法】日本飼養標準に示された養分要求量を充足するようにTMR給与が行われているホルスタイン経産牛(n=20)と粗飼料主体で飼養されているホルスタイン未経産牛(n=20)および黒毛和種(経産牛n=20,未経牛産n=19)から採血し,AGEsの一種であるメチルグリオキサール(MG)誘導体,グルコース,非エステル化脂肪酸(NEFA)濃度を測定した。【結果および考察】ホルスタイン経産牛(平均日齢 1878日,TMR給与)における血中MG誘導体濃度は,加齢による影響を排除するために日齢差がない黒毛和種経産牛(平均日齢 1858日,粗飼料給与)と比較した結果,有意に高かった。一方,血中グルコースおよびNEFA濃度には差が認められなかった。また,粗飼料主体で飼養されている日齢差がないホルスタイン種(平均日齢 517日)および黒毛和種(平均日齢 505日)の未経産牛の間には血中MG誘導体濃度に差が見られなかった。以上のことから,ホルスタイン経産牛におけるAGEsの蓄積は穀類依存比率を高めた飼養体系が一因である可能性が示唆された。
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© 2015 日本繁殖生物学会
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