日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-274
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活性イオウ分子によるカドミウムの不活性化を介した肝毒性および生体応答の制御
*新開 泰弘秋山 雅博鵜木 隆光石井 功熊谷 嘉人
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抄録

【目的】カドミウム(Cd)は親電子性を有し、タンパク質のシステイン残基を修飾することによってその機能を障害することが分かっている。その結果、低濃度ではセンサータンパク質の化学修飾を介したレドックスシグナル伝達経路の活性化を引き起こし、高濃度では毒性を発揮する。本研究では、パースルフィドやポリスルフィドなどの活性イオウ分子が高い求核性を有することに着目し、Cdによって生じるシグナル伝達経路の活性化や肝毒性に対する活性イオウ分子の役割を明らかにすることを目的とした。【方法】細胞:マウス初代肝細胞を用いた。タンパク質の発現:ウエスタンブロット法を用いた。細胞毒性:MTT法で検討した。イオウ付加体の検出:ESI-MSにて分析した。肝毒性:ASTおよびALTを指標にした。【結果および考察】マウス初代肝細胞において、Cdの曝露によって引き起こされたHSP70およびメタロチオネイン-I/II(MT-I/II)の誘導および細胞毒性は、ポリスルフィドのモデル化合物であるNa2S4の処理によって抑制された。ESI-MSにて解析したところ、CdとNa2S4の反応生成物の1つはCdSであった。実際、CdSはCdと比較して殆ど毒性を示さず、HSP70やMT-I/IIも誘導しなかった。一方、CdによるHSP70やMT-I/IIの誘導は、活性イオウ分子の産生酵素の1つであるcystathionine γ-lyase (CSE)の欠損により増強された。更に、Cdによる肝毒性はCSEの欠損により増強し、Na2S4の処理によって抑制された。以上より、活性イオウ分子はCdによるストレス応答タンパク質の誘導や肝毒性の惹起を負に制御する働きがあることを明らかにした。また、活性イオウ分子によるCdの不活性化にはCdSの生成が少なくとも一部関与していることが示唆された。

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© 2017 日本毒性学会
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