日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P0923
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衛星画像を利用した地形区分の試み
*黒田 圭介黒木 貴一
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抄録

_I_.はじめに 段丘や斜面などの地形区分は,一般的に空中写真の実体視によって行われる。最近では,分解能が空中写真にせまる衛星データ(例えばAlos)が入手できるようになってきた。そこで本研究では,Alosのパンシャープン画像を用いて,実体視判読による地形区分を試み,同一地点の空中写真の判読結果と比較した。衛星データを空中写真と同じように地形判読ができれば,広範囲に渡る地形区分が可能となり,GISによるデータ解析・管理の効率化も期待できる。地形学における衛星画像の新たな利活用方法として一般化できれば,その応用範囲は広い。 _II_.研究方法 用意したデータ:AlosのAVNIR-2(2006年6月2日)とPRISMデータ(2007年4月29日の直下視(UN)と後方視(UB))である。前者の解像度は10mで後者は2.5mとした。幾何補正手順:PRISMの直下視(UN)データをGCP10点で2次多項式変換を用いて幾何補正した。幾何補正に使用したGCPを用いて,AVNIR-2データを幾何補正した。パンシャープン画像化:幾何補正済みのPRISMの直下視データとAVNIR-2データを用いてパンシャープン画像を作成した。東西を横とするパンシャープン画像の観察では,平野部は立体的に見え,裾野はまれに立体的に見え,山地部は画像をどう動かしても立体的に見えない。そこで,ArcMap上で画像を103度回転させて衛星軌道を横とするパンシャープン画像に調整した。今回は,丘陵地斜面,段丘,沖積低地を対象に,画像縮尺を1/30000、1/10000、1/5000とした。本要旨では,丘陵斜面地について報告する。 _III_.斜面地形区分の試行 今回判読を行った斜面丘陵は,昭和57年7月に発生した長崎豪雨による斜面崩壊地である。図1は2006年撮影空中写真とPRISMデータのパンシャープン画像である。10m解像度のパンシャープン画像では,山道の識別は困難で,雑木林と裸地が かに判読できる程度である。  図2は空中写真と衛星画像それぞれの実体視にもとづく地形区分図である。空中写真では頂稜,谷頭斜面,谷頭凹地,上部谷壁斜面,下部谷壁斜面,崖錐・段丘,谷底に区分できた。一方衛星画像では,急斜面で隣接地形との傾斜の違いが小さい下部谷壁斜面が区分できず,幅10数m未満の狭い領域を持つ谷頭斜面,谷頭凹地,谷底は部分的しか区分できなかった。したがって,衛星画像は空中写真に比べて,急傾斜領域,狭小領域,傾斜変換線の識別に難があるが,ある程度の斜面地形区分は可能であることが分かった。 _IV_.今後の課題(まとめにかえて)  今回,斜面丘陵地での地形判読はある程度可能であることが分かった。今後は,段丘区分,沖積低地での微地形の区分を_II_-2で示した各縮尺で行い,衛星画像で地形区分を行う際の最も適切な縮尺を考察する。

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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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