日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P2-017c
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琵琶湖固有種であるハゼ科魚類イサザの雄が複数雌との配偶を拒否する理由
*高橋 大輔麻田 葉月武山 智博高畑 美寿樹加藤 励安房田 智司幸田 正典
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抄録

琵琶湖の固有種であるハゼ科魚類イサザは,多くのハゼ科魚類と同様に,雄が石の下に造巣し,卵がふ化するまでの間保護を行う。本種の雄は1匹の雌と番うと,その雌の卵がふ化するまでの間,他雌が産卵しようとしても攻撃的に排除することが知られている。繁殖期における野外調査の結果から,産卵直後の卵群よりも,ふ化直前の卵群の方が卵数が少ないことがわかった。保護卵を食べていた保護雄はほとんどいなかったことから,保護の進行に伴う卵群サイズの低下は,雄の卵食が原因ではないと思われた。20%の巣において,水生菌に感染した卵群が見つかった。そのうちのいくつかは,マット状の水生菌に覆われていた。水生菌感染は卵発生が進んだ卵群で主に見られた。水生菌に感染した卵群における卵の生存率は著しく低かったことから,保護後期での卵群サイズの減少は,水生菌感染によるものと思われた。健康な卵群に比べて,水生菌に感染された卵群の方が卵数が多かったことは,大きな卵群ほど水生菌に感染する危険性が高いことを示唆する。以上の結果から,イサザの雄が複数雌との産卵を拒否することは,卵群サイズの増加に伴う水生菌感染の危険を避けるためであると思われた。最後に,イサザにおいて繁殖成功を最大にする最適卵群サイズが存在する可能性について考察する。

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© 2004 日本生態学会
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