順天堂醫事雑誌
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都民公開講座:最新のワクチン事情
がん治療におけるワクチン療法の現状
がんペプチドワクチン療法を中心に
加藤 順子渡邊 純夫
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2014 年 60 巻 Suppl.2 号 p. s48-s52

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抄録

悪性腫瘍に対する免疫療法は,外科治療,化学療法,放射線療法に次ぐ第4のがん治療法として注目されています.
がんワクチンは,すでにがんが体内に存在している状態に対し,免疫力を高めてそのがん細胞を攻撃する治療法であり,細菌やウイルスなどの感染症を予防する一般的なワクチンとは異なります.また,がんワクチンは,がん細胞に対して免疫機構を介した間接作用によって効果を発揮するため,直接効果を発揮する抗がん剤や分子標的治療薬などの従来の治療法と比べ,治療効果が現れるまでに一定の時間を要しますが,正常細胞は攻撃しないことから副作用が少なく,また投与が簡便であることから,QOL(quality of life)を損なわず行うことができる治療法として期待されています.
1991年に悪性黒色腫に対する腫瘍拒絶抗原ペプチドを用いた免疫治療が報告されてから,様々な腫瘍抗原やその抗原遺伝子を利用した抗腫瘍免疫療法が検討されるようになりました.2010年には,前立腺がんに対するがんワクチン製剤であるsipuleucel-T(Provenge®)が米国で承認され,世界で初めて認められたがんワクチン療法として実臨床の場に登場し,それにより承認に向け多数のがんワクチンの臨床試験が進行しており,開発競争が激しくなっています.
日本で最も臨床試験が進行しているのが,がんペプチドワクチン療法です.がんペプチドワクチン療法は,HLA拘束性ペプチドを投与することにより,がん細胞に特異的な細胞障害性T細胞(CTL)を活性化させて免疫応答を増強し,そのがん細胞を攻撃して抗腫瘍効果を示す方法です.膵臓がんや大腸がんなどがん種によって効果のあるペプチドワクチンの種類が違っており,現在,様々なペプチドワクチンを組み合わせたカクテル療法が各施設で臨床試験として行われています.がんペプチドワクチン療法の効果や副作用,現状について消化器がんを中心にお話しします.

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