日本応用動物昆虫学会誌
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宿主昆虫の変態におよぼすChilo Iridescent Virus感染の影響
第1報 ウイルス感染による変態の異常
石川 光一室賀 政邦
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1976 年 20 巻 2 号 p. 61-68

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抄録

ニカメイガ幼虫およびハチミツガ幼虫を用いて,CIVを接種した場合に,感染虫の変態に異常が起る現象について実験を行なった。
(1) ニカメイガ非休眠終令幼虫に対して,CIVを経皮接種したところ,供試虫40頭のうち32頭がCIVに感染し,しかも感染虫全部が蛹への変態に異常を現わした。すなわち,幼虫と蛹の両形質をもつ中間型いわゆるプロセテリー,あるいは過剰脱皮幼虫などが出現した。
(2) ハチミツガ終令(7令)幼虫に対して,高度に精製したCIVを経皮接種したところ,供試虫406頭すべてがCIVに感染し,変態に異常を現わした。すなわち,接種時期の違いにより,いろいろな程度に幼虫と蛹の形質を合せもつ中間型が出現し,これらの中間型をI∼VIをのタイプに分け,その特徴を比較した。
(3) ハチミツガ幼虫において,終令後期にCIVを接種した場合,感染しているにもかかわらず蛹化する個体がみられ,それらの多くは成虫化したが,一部の感染蛹は第2次蛹を形成した。
(4) ハチミツガの6令2∼3日目の幼虫にCIVを接種したところ,接種後3∼6日目までにすべてが幼虫脱皮を引き起した。これらの個体はすべてCIVに感染しており,しかもその大部分は終令幼虫のまま2ヵ月以上も生存した。一方,CIVを蛹に接種した場合,感染したにもかかわらず変態の異常は認められなかった。
(5) ハチミツガ終令3日目の幼虫に対して,紫外線照射および熱処理により不活化したCIVを高濃度で接種したところ,ほとんどが蛹化し,さらにその半数以上は正常に羽化した。

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