2013 年 70 巻 5 号 p. 193-198
“摩擦”は身近な現象ではあるが,非常に複雑で学際的研究が必要な分野である.近年,摩擦によるエネルギーロスをいかに減らすかが重要な課題となっているが,明確な解決方法がないのが現状である.一方で自然界には優れた表面機能をもつ生物が多数存在しており,ヘビの鱗やキリギリスの足先など摩擦に関しても例外ではない.それらの表面微細構造を模倣することで低摩擦表面の作製が可能となる.本報では自己組織化高分子微細構造を利用した低摩擦表面の作製とその摩擦力測定の結果について報告する.自己組織化を利用し,結露した水滴を鋳型としてハニカム状多孔質膜を作製した.その後,二度構造転写することでマイクロディンプルアレイ(MDAs)を作製した.さらに銀無電解メッキを行った後,これらの表面摩擦力を測定した.その結果銀メッキMDAs表面は,平滑な表面と比べて摩擦力が低くなっており,無潤滑状態での低摩擦表面の作製に成功した.