2012 年 69 巻 8 号 p. 460-467
カニやエビの殻の主要な構成成分である「キチン」はナノサイズの繊維の形状で内包されている.筆者らはキチンナノファイバーを極めて単純な工程で単離する技術を開発した.単離したナノファイバーは幅が10~20 nmであり,均一かつ高アスペクト比であった.キチンナノファイバーの用途範囲を広げるため表面改質を行っている.また,キチンナノファイバーは優れた物性を備えており,プラスチックを強化するための補強繊維として有効であることを見いだした.補強効果によってプラスチックの強度,弾性率が大幅に向上し,その熱膨張が大幅に減少した.しかも,ナノサイズの効果によりナノファイバーを配合してもプラスチックの透明性が損なわれない.また,キチンナノファイバーは光学異性体の分割能を備えており,その膜はアミノ酸のラセミ体を分割する.また,キチンナノファイバーを服用することによって潰瘍性大腸炎の炎症抑制に効果があることを見いだした.