高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
総合論文
カニ殻に内包されるキチンナノファイバーの単離技術および用途開発
伊福 伸介
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 69 巻 8 号 p. 460-467

詳細
抄録

カニやエビの殻の主要な構成成分である「キチン」はナノサイズの繊維の形状で内包されている.筆者らはキチンナノファイバーを極めて単純な工程で単離する技術を開発した.単離したナノファイバーは幅が10~20 nmであり,均一かつ高アスペクト比であった.キチンナノファイバーの用途範囲を広げるため表面改質を行っている.また,キチンナノファイバーは優れた物性を備えており,プラスチックを強化するための補強繊維として有効であることを見いだした.補強効果によってプラスチックの強度,弾性率が大幅に向上し,その熱膨張が大幅に減少した.しかも,ナノサイズの効果によりナノファイバーを配合してもプラスチックの透明性が損なわれない.また,キチンナノファイバーは光学異性体の分割能を備えており,その膜はアミノ酸のラセミ体を分割する.また,キチンナノファイバーを服用することによって潰瘍性大腸炎の炎症抑制に効果があることを見いだした.

著者関連情報
© 2012 公益社団法人 高分子学会
前の記事 次の記事
feedback
Top