高分子論文集
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総合論文
フェロセン部位を末端に有するヘリックスペプチドを用いて金表面上に調製した自己組織化単分子膜における長距離電子移動
森田 智行渡辺 潤竹田 和樹甲斐 美奈子有熊 洋子岡本 紳平木村 俊作
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2009 年 66 巻 10 号 p. 406-418

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抄録

レドックス活性なフェロセン部位を末端に有するさまざまなヘリックスペプチドを用いて金表面上に自己組織化単分子膜を調製した.エリプソメトリー,赤外反射吸収スペクトル測定,電気化学ブロッキング実験などの結果,これらのヘリックスペプチドは垂直配向の規則正しい単分子膜を形成していることが示された.種々の電気化学測定により,フェロセン部位から金への長距離電子移動について調べ,ダイポールモーメント,ペプチド側鎖,鎖長,分子配向,単分子膜のパッキング,ペプチドと金とを繋ぐリンカー部位,のそれぞれが電子移動に及ぼす効果について検討した結果,以下のような興味深い知見を得た.1)ダイポールと同方向の電子移動は逆向きの場合に比べ数倍加速される場合がある,2)側鎖に発色基を導入しても電子移動は加速されない.3)へリックスペプチド鎖長が長くなると短距離電子移動で支配的なトンネリング機構とは異なる電子移動機構へ変化する.長距離電子移動で支配的となる電子移動機構としてアミド基を介したホッピング機構が考えられる.4)側鎖が小さく膜中でペプチド主鎖どうしが近接している場合,電子移動は複数のペプチド分子を介する分子間移動も可能となる.5)電子移動はへリックスペプチドに許容される分子運動の容易さと関係しており,膜のパッキングが緩く特定の分子運動が促進されると電子移動は加速される.6)16~18 量体へリックスペプチドにおいて,リンカー部位をアルキル鎖から芳香族に変えると電子移動は顕著に加速されるが,芳香族リンカーに電子供与性あるいは電子吸引性基を導入してレドックス準位を変化させても電子移動速度は影響を受けない.

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© 2009 公益社団法人 高分子学会
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