ポリアミド 66(PA66)に塩化第二銅・二水和物を微量添加して,耐熱性の変化を観測するとともに高分子構造についての研究を行った.その結果,銅を 35 ppm 以上添加すると熱安定性に変化が見られたが,濃度と安定性には強い比例関係は見られなかった.分子量は銅を添加しても低下するが,その程度は小さかった.吸水性は銅の添加によって増大した.赤外分光分析と NMR の測定では構造的に変化が見られた.熱を加えることによって主鎖の開裂が見られ,開裂の程度は銅によって抑制される.銅が親水性基を有する PA66 中に均一に分散したとして,銅 1 原子が占有する体積に銅原子が半分拡散する時間が 2~200 μs 程度と短いことによる,アミド結合周辺の安定化効果と高分子鎖全体に及ぼす立体構造の変化が原因の一つになっていると考えられる.