高分子論文集
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有機分子に包まれたCapped-CdSeナノ結晶の発光特性
小田 勝塚本 順平長谷川 篤史萩原 泉松林 正行谷 俊朗
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2004 年 61 巻 1 号 p. 63-74

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抄録

有機分子の配位結合によって結晶表面を封止したCdSeナノ結晶の合成法, および, ナノ結晶表面におけるZnS積層膜作製法の最適化を行い, 吸収・発光測定と高分解電子顕微鏡撮影 (HRTEM) より試料の評価を行った. その先鋭な吸収・発光バンドは, サイズ分散の狭さと結晶性の良さを示しており, HRTEM像からもこの事実が確認できる. また, 最適化により, 常に発光量子効率が室温で50%を超えるナノ結晶の作製が可能となった. この試料を用いて, 自作走査型レーザー顕微鏡で単一ナノ結晶の発光強度時間変化を観測したところ, 突然の激しい発光強度の乱高下や, 光照射に伴う発光明滅周期の増加などを示すこれまでの報告にないナノ結晶が多数観測された. その原因を究明するため, メゾスコッピックな系といえる1000個程度のナノ結晶の集団からの積分発光強度を測定し, その光照射効果を測定したところ, 通常のナノ結晶とは逆の光照射に伴う発光強度の増大が確認され, その増大はナノ結晶周辺の気体雰囲気の種類に依存することが明らかになった. 以上の単一とメゾスコピック系におけるナノ結晶の異常な発光の振舞いは, 気体分子の光吸着がナノ結晶表面の無輻射緩和中心に対して封止効果をもたらすことに起因すると考えられる.

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