1982 年 44 巻 3 号 p. 479-485,488
ウシ白血病腫瘍期にある妊娠牛47例お上びその胎児51例について, 病理組織学的検索を行なった. 母ウシについては, 血清 BLV 抗体および電顕による BLV 粒子の検索を併せ行ない, 検査した全例が陽性であった. 血清 BLV の検索を行なった15例の胎児では, 5例(30.3%)が陽性で, そのうち1例は母ウシより高い抗体価を示し, かつ胎児胎盤に腫瘍細胞の浸潤を認めた. 別の2例では全身に腫蕩組織が認められ, そのうち1例では胎児胎盤から臍帯を経て, 胎児皮下に腫瘍組織が見られ, 母ウシからの浸潤とともに転移を思わせるものがあった. また, 血清を検査しなかった36例の胎児のうち, 11例(30.6%)のリンパ組織に活性化が認められ, BLV の経胎盤感染を思わせた. これらの所見にもとついて, 経胎盤感染の頻度, 病理発生などについて考察を加えた.