日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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四足獣の歩行運動の筋電図学的・関節機構学的研究 : II. 速歩
徳力 幹彦
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1973 年 35 巻 6 号 p. 525-533_2

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抄録

速歩trotでは,対角線上にある体肢が1対に.なって,ほぼ同時に離着地し,常歩walkと同様の踏歩順序を保ち,1完歩は2つの対称な姿勢から成る.実験材料および実験方法は,前報゛′I.′常歩"と同じである.ただしトレッドミルは分速120mとした.速歩を常歩と比べて,その特徴をあげると,(1)1完歩の時間が短い.(2)サイクログラムの軌跡がなめらかで律動的である.(3)各関節の運動範囲は拡大する.(4)各筋の放電活動が増強する.(5)常歩の場合とは異なった活動位相を持つ筋がある.これは後肢よりも前肢に,肢端に近い筋よりも躯幹に近い筋に多い.ところで,速歩と常歩の最大の相違点は歩行速度である.速歩はこれを増加させるために,四肢の着地時間を減少させ,踏歩の順序を保ちながら,換歩の間隔を変化させる.この結果,軸心骨格は,両端さしかけ梁の中心に規則的に重量を負脱した場合と類似の運動をする.前述した(1)~(5)は,速度を増加させるために生ずるのであり,特に(5)は軸心骨格の運動が異なるために現われるのである.すなわち,重心により近い前肢が,また,軸心骨格により近い筋が,その影響をより強く受けるのである.しかしながら,筋の活動様式および各関節の変化からみると,(1)~(5)の相違は二次的なものであり,四肢の運動は,常歩と速歩では本質的に差がないといえる.

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