日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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TOXACARIS LEONINA に関する実験的研究 : I. 犬および猫における感染状況
大越 伸薄井 万平
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1967 年 29 巻 4 号 p. 185-194_2

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抄録

ToxascarisleoninaLINSTOW,1902は肉食獣の腸内に寄生する回虫の一種で,諸外国では犬猫に広く分布している.わが国では,動物園のライオン,虎および輸入犬の感染が報告されたのみで,一般には余り知られていなかった.内国産大への寄生は,1930年ごろに東京でまれに認められたと記載されている.その後最近まで,その姿は全く認められなかった.また猫への寄生は,従来わが国で,全然報告がなかった.著者らは.かねてから東京における犬猫について,T.leonina感染状況の詳細な調査を行なっていた.その結果,内国産犬では,1958年以降にその寄生を認め,また猫については,1965年に初めて本虫の寄生を発見した.その後,次第に犬猫へ蔓延の徴があることを知り得た.わが国の犬猫に寄生する回虫には,Toxocaracanis,ToxocaracatiおよびT.leoninaの3種がある.それらの外形は,たがいに酷似していて,区別が容易でない.そこで,3種回虫の虫体および虫卵の形態について,まずT.leoninaとの相違点を明らかにした.次いで東京大学付属家畜病院に来診した犬猫を材料として,前記の各種回虫に関する感染実態を,9年間にわたって追究した.1.内国産大においては,1958年にT.leoninaの寄生を認めるに至り,今日までの9年間の感染率は1.27%(総検査数3140頭,陽性40頭)であった.なお,この期間中のT.cqnisの感染率は9.62%であった.犬へのT.leonina感染源は,.主として輸入犬である・ど推定された.年令別に!よ,幼犬にも,成犬にも,同様に感染を認めた.2.猫については,1965年に初めてT.leoninaの感染を認めた.その後今日までの2年間における感染率は5.0%(総検査数100頭,陽性5頭)であった.猫への感染源は,いずれも輸入猫か,または明らかに,それからの感染が確認されたものであって,T.leonina感染犬との関係は,全く認められなかった.なお,同じ調査期間中における猫のT.cati感染率は17.0%であった.

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