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Research Article
Revised

COVID-19 measures and human rights guaranteed by the Japanese Constitution

[version 2; peer review: 2 approved]
Previously titled: COVID-19 measures and the Japanese Constitution
PUBLISHED 14 Sep 2021
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OPEN PEER REVIEW
REVIEWER STATUS

This article is included in the Japan Institutional Gateway gateway.

This article is included in the Emerging Diseases and Outbreaks gateway.

This article is included in the Coronavirus collection.

Abstract

Since March 2020, the Act on Special Measures for Pandemic Influenza and New Infectious Diseases Preparedness and Response has been a significant statute in dealing with COVID-19 in Japan. The Act mandates requests, instructions and orders for business suspension and shortened business hours, as well as stay-at-home requests. These measures limit freedom of movement and establishment, guaranteed rights under the Japanese Constitution. This article poses the following research question: “Does the Japanese Constitution allow measures against COVID-19 such as requests, instructions and orders for business suspension and shortened business hours, and stay-at-home requests?” It also asks: “Are measures with penalties allowed by the Constitution?” given the fact that the penalties were introduced in February 2021. This paper introduces constitutional concepts that guarantee or limit individual freedom. Concepts that guarantee individual freedoms include freedom of establishment and movement. These freedoms derive from the constitutional values of freedom to choose one’s occupation and choose and change one’s residence (Art. 22) and the right to own or hold property (Art. 29). Concepts that limit individual freedom include the right to life (Art. 13), welfare rights and public health (Art. 25), and public welfare (Art. 13). Individual freedom that threatens right to life, welfare rights and public health, and public welfare may not be guaranteed. This paper argues that the Constitution allows the measures against COVID-19 limiting freedom of establishment and movement from the perspectives of the right to life, welfare rights, public health, and public welfare, and the government is responsible for reducing the risk to life from COVID-19. It also argues that the Constitution permits measures with penalties, while proportionality needs to be considered.

Keywords

新型コロナウイルス感染症, 日本国憲法, 新型インフルエンザ等対策特別措置法, 人権, 営業の自由, 移動の自由, 生命権, 生存権, 公衆衛生, 公共の福祉, COVID-19, the Constitution of Japan, the Act on Special Measures for Pandemic Influenza and New Infectious Diseases Preparedness and Response, human rights, freedom of establishment, freedom of movement, right to life, welfare rights, public health, public welfare

Revised Amendments from Version 1

第1版への査読コメントを踏まえ、主に以下の加筆修正を行った。
第一に、先行研究への言及を充実させた。
第二に、COVID-19が近代立憲主義的な人権概念に挑戦を投げかけているとの問題意識を明記した。
第三に、「公共の福祉」と「個人の人権」との分類を、「個人の自由を保障する概念」と「個人の自由を制限しうる概念」に整理し直す必要性を説明した。
第四に、批判を踏まえた上で、生存権を具体的請求権として捉えることの重要性を指摘した。
第五に、現時点でのCOVID-19対策について、憲法の視点からの評価を試みた。
第六に、COVID-19対策の合憲性判定に関する基準や原則を試論的に示した。
第七に、第1版脱稿後の社会情勢の変化を反映させた。

See the author's detailed response to the review by Hajime Yamamoto
See the author's detailed response to the review by Masahiro Sogabe

はじめに

2020 年から 2021 年にかけて新型コロナウイルス感染症 (以下、COVID-19) の感染確認者数が増加し、社会は大きな影響を受けている。COVID-19には無症状者が多く 1 、感染者が明らかでないため、感染拡大予防のために外出を制限する国が多い。各国の COVID-19 対策を分析する Our World in Data によれば、2021 年 8 月 11 日現在、116 の国や地域で外出自粛要請や外出制限などの措置が取られている 2 。個人の自由を制限するCOVID-19対策は、社会が感染症といかに向き合うべきかとの論点を想起させる。人権は今日、グローバルな規範として認識され、日本国憲法にも多くの人権規定が置かれている。そして歴史的・思想的基盤となったのが、個人の国家からの自由を保障する自由権概念であった。COVID-19対策は、従来個人の自由と考えられてきた営業や移動の自由を制限する側面があり、今日の社会における根本的な価値に疑問を投げかけている。

日本においても、COVID-19対策として営業や移動の自由には制限が課されてきた。2020 年 3 月以来「新型インフルエンザ等対策特別措置法 (以下、特措法) 」が COVID-19 対策の中心的な役割を果たしてきた。2021 年 2 月までは同法に基づき、休業や営業時間短縮の要請・指示、外出自粛要請が行われてきた。2021 年 2 月に同法が改正され、休業や営業時間短縮の命令が可能になり、罰則規定も設けられた。これらの要請・指示・命令には日本国憲法が保障する営業の自由や移動の自由を制限する側面がある一方で、COVID-19 対策が憲法に規定される公共の福祉に適合しており、自由の制限はやむを得ないとの見解もあり得る。

日本の COVID-19 対策の憲法上の論点については多様な論点が指摘されてきたが、COVID-19対策と憲法が保障する人権を包括的に議論した論文は、本論文の第 1 版 (version 1) 脱稿時点(2021 年 1 月 10 日)では限られていた 3 。その中で、特に包括的な分析を行った論文として、2020 年に執筆された江藤祥平による論文が挙げられる 4 。江藤は「公共の福祉」と「個人の人権」という図式を提示し、感染症対策のための私権の制限の合憲性について詳細かつ批判的に検討している。同論文は憲法における公衆衛生、表現の自由、営業の自由、個人の尊厳、自己決定権にとどまらず、国際人権法における健康への権利にも言及しており、多角的に COVID-19 対策について検討を行っている。しかし、江藤論文における分析に加えて、以下の二点の検討が必要である。第一に、憲法 13 条に規定される生命権を検討する必要がある。通説では生命権が十分に議論されてこなかったが、COVID-19 の感染拡大は人権の基盤である生命への脅威と捉えることができ、生命権の概念を含めて COVID-19 対策を検討し直す必要がある 5 。第二に、「公共の福祉」と「個人の人権」という分類の妥当性を再検討する必要がある。江藤の述べる通り、この二項対立は憲法学では「お馴染みの図式」である 6 。従来、人権保障が憲法の一義的な価値の一つであり、公共の福祉により人権が制限されうるとの説明がなされてきた 7 。しかし COVID-19 対策においては、公共の福祉と人権でなく、人権規範同士が衝突することも想定される。例えば COVID-19 が生命権への脅威であると捉えれば、感染拡大予防策により江藤が「個人の人権」と呼ぶ自由権的な権利が制限される一方で、生命権が保障される可能性がある。換言すれば、従来「公共の福祉」として捉えられてきた自由権の制限により保障される権利もまたあるのである 8 。すなわち人権には国家による干渉に否定的な自由権の側面と、国家による積極的な行動を求める社会権の側面があるため、人権における自由権の価値を相対化する必要がある。人権の制約規範であると考えられてきた公共の福祉の内容を、憲法の一義的な価値である人権として位置付け直すことは、自由の制限への憲法上の意味を評価するために重要である。よって人権を的確に理解するために、「個人の自由を保障する概念」及び「個人の自由を制限しうる概念」に整理し直し、COVID-19 対策の憲法上の論点を再検討する必要がある。

本稿のリサーチ・クエスチョンは、「COVID-19 対策としての休業や営業時間短縮の要請・指示・命令及び外出自粛要請に、憲法上の制約もしくは要請はあるか」である。また、2021 年 2 月に特措法が改正され、罰則規定が導入されたことを踏まえ 、「罰則のある措置は憲法上認められるか」との論点も検討する。

なお、本稿は特措法に基づく対応に着目して検討する。特措法以外にも、感染症法上の指定感染症 9 、検疫法上の措置、予防接種法上のワクチン等の論点があるが、これらは別稿に譲りたい。その上で、本稿は特措法に基づく対策の総論的な論点の整理に留め、各論的な議論の詳細には立ち入らない。例えば首長による要請・指示・命令については、行政法の視点を導入する必要があるが、論点が散逸するため詳細には扱わない。また、本稿は 2021 年 1 月 10 日以前の情報をもとに執筆した第1版を基盤としつつ、第1版への査読コメントを踏まえて、 2021 年 8 月 12 日までの情報や新たに公開された研究を可能な限りアップデートして執筆したものである。COVID-19 の状況、政府の対応は刻一刻と変化することにご留意いただきたい。

第 1 節では、特措法に基づき採られた COVID-19 対策を紹介する。第 2 ・ 3 節は、COVID-19 対策に関連する、個人の自由を保障する概念及び個人の自由を制限しうる概念を指摘する。第 4 節では、上記の概念を COVID-19 対策に適用し、COVID-19 対策を検討する際の憲法的論点を整理する。

I. 特措法と COVID-19 対策

2021 年 8 月現在、日本における COVID-19 対策の基盤となっているのは、特措法である。特措法は、2009 年に新型インフルエンザが世界的に流行し、医療資源が逼迫したことを契機として、2012 年に成立し、2013 年に施行された 10 。2020 年に COVID-19 が特措法の対象となった後、2021 年に改正されている。

特措法の対象は新型インフルエンザ、再興型インフルエンザ及び新感染症である 11 。ここで重要なのは、特措法の対象となる感染症は、国民の多くが免疫を獲得していないため、急速な蔓延により国民の生命及び健康に重大な影響を与える恐れがある点である 12 。そのため、既知の感染症より強い措置が必要となる。

特措法の特徴は、緊急事態宣言の発出や外出自粛要請、施設の使用制限要請・指示等が可能になることだが、厚生労働省幹部によれば、日本で初めて COVID-19 感染者が確認された 2020 年 1 月時点では特措法の適用が必要であるとの認識は共有されておらず、感染症法及び検疫法を基盤とした対応が想定されていた 13 。同年 2 月 1 日に、COVID-19 は感染症法に基づく二類相当の「指定感染症」とされ、感染の疑いがある患者の入院措置が可能になった 14 。また同日、COVID-19 が検疫法上の「検疫感染症」となり、強制力を伴う入国時の診察・検査が可能になった 15

しかし同年 2 月 21 日に国内感染者数が 100 人を超えると社会的な緊張が高まり、2 月 27 日には当時の安倍首相が、感染拡大抑制のために必要な法案を早急に準備するよう指示した 16 。そして 3 月 13 日に特措法が改正され、翌 14 日より COVID-19 が特措法の対象となった 17

2020 年 3 月から 2021 年 2 月まで適用されていた特措法では、二段階構造により新型感染症のまん延予防を試みた 18 。第一段階は政府対策本部の設置である。従来のインフルエンザより症状が深刻である新型感染症が発生した際に、政府対策本部、都道府県対策本部が設置される 19 。都道府県対策本部長となる都道府県知事は、特措法 24 条第 9 項に基づき、団体、個人に必要な協力を要請する事ができる。

第二段階が緊急事態宣言である。首相は、感染症が全国的なまん延により、国民社会、国民生活に甚大な影響を及ぼす場合に緊急事態宣言を発出し、緊急事態措置を実施すべき期間、区域を指定する 20 。特措法は緊急事態宣言発出時の専門家の役割に触れていないものの、首相が専門家に諮問することが想定されている 21 。緊急事態措置の対象となった地域では、都道府県知事が要請・指示等の主体となるが、政府が定める基本的対処方針 (特措法 18 条)に沿って要請・指示等を行うこととなる 22 。また、新感染症対策であっても、国民の自由や権利への制限は最低限であるべきであると規定されている 23

2021 年 2 月まで適用されていた特措法では、45 条に基づき、緊急事態措置の対象となった地域において、都道府県知事が不要不急の外出自粛要請及び施設使用制限の要請を行う事が可能となった 24 。施設の使用制限要請に応じない場合、罰則を課すことはできないものの、知事が施設管理者に法的義務を課す指示を行う権限が与えられた 25 。45 条に基づいて施設使用制限が要請・指示された際には公表されることとなっており 26 、公表による社会的な影響も指摘された 27

2020 年 3 月 14 日に COVID-19 が特措法の対象となると、同法 15 条に基づく政府対策本部が設置され 28 、各都道府県知事が同法 24 条に依拠した団体・個人への要請を行うことが可能になった 29 。感染確認者数の増加と社会的危機感の高まりを受け 30 、2020 年 4 月 7 日から 5 月 25 日にかけて日本全国もしくは一部に緊急事態宣言が発出された 31 。緊急事態宣言解除後も、同法 24 条第 9 項を根拠として、断続的に外出自粛要請を行った都道府県がある 32 。また、2020 年 4 月の緊急事態宣言発出後は、解除後も含め、散発的に同法 24 条第 9 項を根拠として休業や営業時間短縮の要請を出した都道府県があった 33

2020 年末から感染確認者数が 1 日に 3000 人を超える日が続き、重症者数も多かったため 34 、2021 年 1 月 8 日から埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県を対象として緊急事態宣言が発出された 35 。しかし都道府県知事による要請に応じない事例も多く 36 、感染状況の改善が見られなかったため、緊急事態宣言発出中の 2021 年 2 月 3 日に特措法が改正され、2 月 13 日より施行された。主な改正点は以下の 2 点である。第一に、「まん延防止等重点措置(以下、重点措置)」が導入された。これは、緊急事態宣言以前に効果的な感染症対策を実施可能にするための措置であり、従来の政府対策本部の設置と緊急事態宣言の間に位置付けられる。すなわち、従来の二段階から三段階で感染症に対応することとなった。重点措置が適用されると都道府県知事は、事業者に対して営業時間の変更を要請することができる 37 。また住民に対して営業時間の変更の要請に従わない場への出入り自粛を要請することができる 38 。事業者が営業時間の変更要請に従わない場合、都道府県知事は、営業時間の変更を命令することができる 39 。重点措置の際には、休業の要請・命令が可能になる緊急事態宣言の前段階として、営業時間の変更の要請・命令が可能になる 40

第二に、緊急事態宣言及び重点措置では、命令を出すことが可能になり 41 、命令への違反行為には罰金を課すことができるようになった。緊急事態宣言時の違反には30万円までの過料 42 、重点措置時の違反には20万円までの過料を課すことができるようになった 43 。特措法改正後も緊急事態宣言及び重点措置は複数の都道府県を対象として断続的に発出されている(表 1 参照。内閣官房ウェブサイト (http://corona.go.jp/emergency/) を参考に著者が作成)。

表1. まん延防止等重点措置、緊急事態宣言の発出状況と適用/解除地域

まん延防止等重点措置緊急事態宣言
2020年特措法
日付 適用/解除 適用/解除地域
2020年4月7日適用埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫、福岡
2020年4月16日追加適用埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫、福岡を除く40道府県
2020年5月14日一部解除北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫を除く 39 県
2020年5月21日一部解除京都、大阪、兵庫
2020年5月25日全国解除北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川
2021年1月8日適用埼玉、千葉、東京、神奈川
2021年1月14日追加適用栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡
2021年改正特措法
日付 適用/解除 適用/解除地域 日付 適用/解除 適用/解除地域
2021年2月7日一部解除栃木
2021年3月7日一部解除岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡
2021年3月21日全国解除埼玉、千葉、東京、神奈川
2021年4月5日適用宮城、大阪、兵庫
2021年4月12日追加適用東京、京都、沖縄
2021年4月20日追加適用埼玉、千葉、神奈川、愛知
2021年4月25日追加適用愛媛
2021年4月25日宣言へ移行東京、京都、大阪、兵庫2021年4月25日適用東京、京都、大阪、兵庫
2021年5月9日追加適用北海道、岐阜、三重
2021年5月11日一部解除宮城
2021年5月11日宣言へ移行愛知
2021年5月12日追加適用愛知、福岡
2021年5月16日宣言へ移行北海道2021年5月16日追加適用北海道、岡山、広島
2021年5月16日追加適用群馬、石川、熊本
2021年5月22日一部解除愛媛
2021年5月23日宣言へ移行沖縄2021年5月23日追加適用沖縄
2021年6月13日一部解除群馬、石川、熊本
2021年6月20日一部解除岐阜、三重2021年6月20日一部解除北海道、東京、愛知、大阪、京都、兵庫、岡山、広島、福岡
2021年6月21日宣言から移行北海道、東京、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡
2021年7月11日一部解除北海道、愛知、京都、兵庫、福岡
2021年7月11日宣言へ移行東京
2021年7月12日追加適用東京
2021年8月2日宣言へ移行神奈川、千葉、埼玉、大阪2021年8月2日追加適用埼玉、千葉、神奈川、大阪
2021年8月2日適用北海道、石川、京都、兵庫、福岡
2021年8月8日追加適用福島、茨城、栃木、群馬、静岡、愛知、滋賀、熊本

II. 個人の自由を保障する概念

罰則の有無にかかわらず、特措法による休業や営業時間短縮要請・指示・命令、外出自粛要請は、国家権力による市民の自由の制限となりうる。特に 2021 年 2 月の特措法改正により導入された、罰則が課されうる休業や営業時間短縮の命令は、市民の自由制限の度合いが強い。国家による介入の回避を重要視する近代立憲主義を基盤とし 44 、大日本帝国憲法下での国家権力の強大化を経験した後に制定された日本国憲法の視点からは、認められるべき市民の自由制限の程度が重要な論点となる。本節では、日本国憲法が保障する個人の自由として、営業の自由及び移動の自由についての判例や学説を検討する。

休業や営業時間短縮の要請・指示・命令は、営業の自由を制限しうる。営業の自由に関連する条文は、憲法 22 条、29 条、13 条である。営業の自由自体を保障する文言は憲法に存在しないが、判例、通説によれば憲法 22 条の職業選択の自由により営業の自由が保障されると考えられている 45 。また、22 条の職業選択の自由に加えて 、29 条に規定される財産権により営業の自由が保障されるとの見解もある 46 。その上で、憲法 13 条に規定される人格権と関連して営業の自由を位置付けることもできる。薬事法違憲判決は、職業が「個人の人格的価値とも不可分の関連を有する」としており 47 、学説でも営業の自由と人格的価値の関連が指摘されている 48 。人格的価値は憲法 13 条から導出できる人格権と関連しており 49 、営業の自由が人格権の視点からも重要であることを示唆している。

外出自粛要請は、移動の自由を制限しうる。関連する条文は憲法 22 条及び 13 条である。移動の自由は、居住・移転の自由を規定する憲法 22 条に基づき保障されると考えられている 50 。その上で、移動の自由は人の活動領域を拡大し、人格形成に寄与するとの指摘もあり 51 、憲法 13 条を基盤とする人格権として移動の自由が捉えられる可能性もある 52

III. 個人の自由を制限しうる概念

憲法には個人の自由を保障する概念がある一方で、個人の自由を制限しうる概念も存在する。自由の行使が生命権、生存権・公衆衛生、公共の福祉の脅威となる場合、自由は一定の制限を受ける。

第一に、生命権の脅威となる自由は制限されうる。生命権の根拠は憲法 13 条である。日本国憲法における生命権は、1987 年に櫻田が提唱し 53 、石村 54 、ウィリアムズ 55 、小林 56 が議論を深め、山内が 2000 年に体系化を試みた 57 。しかし通説では、憲法 13 条の「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」が幸福追求権を意味するとされ 58 、判例も憲法 13 条が生命権を規定するとの理解を示しておらず 59 、生命権については十分議論されてこなかった 60 。しかし、生命権は以下の二つの理由から、幸福追求権とは別個に理解されるべきである。第一に、条文の文理上の解釈である。生命に対する権利、自由に対する権利及び幸福追求に対する権利は並列で表記されているため、生命に対する権利は幸福追求に対する権利に包含されず、別個に位置づけられるべきである 61 。第二に、権利の性質である。生命の維持は幸福追求権を含むあらゆる権利の前提であり、「もっとも基本的な人権」と考えられるべきである 62 。生命への権利は、国王の圧政からの解放という近代憲法成立の文脈では、「国家に殺されない権利」が中心的な議論であり、主に国家の介入を否定する自由権的な文脈で議論されることがあった 63 。しかし、COVID-19 への対応が必要となる今日においては、国家の積極的な介入を要求する社会権的な視点を含めて生命権を捉える必要があり、国家による生命の保護義務も含まれるべきである 64 。COVID-19 による死者は 2021 年 8 月 14 日現在、日本で 15393人確認されており 65 、COVID-19 が生命権の脅威となることを示している 66 。よって、生命権保障の手段として COVID-19 対策が求められる。

第二に、憲法 25 条の生存権の保障・公衆衛生の保全を目的とした自由の制限は認められうる。COVID-19対策は公衆衛生の保全により実現するため、生命権保障のための手段として生存権保障・公衆衛生保全を位置付けることができる。しかし通説、判例によれば、憲法 25 条に基づく具体的請求権は認められておらず 67 、感染症対策の請求権も認められないであろう。その理由として一般的に①不確定概念性 68 、②審査不適合性、③作為方法不特定性 69 、④予算随伴性が挙げられてきた 70 。しかし、上記の具体的請求権を認めない理由は批判的に検討すべきである。①憲法上における生存権の文言が不明確であるとする不確定概念性については、例えば「わいせつ」概念が裁判所によって解釈されている事例があり、憲法25条における「健康で文化的な最低限度の生活」も裁判所が解釈することができる 71 。また「一票の格差」問題においても裁判所が違憲審査を行っており、裁判所が基準を示すことは可能であるし、学説も解釈を行っている 72 。②専門的・政策的な審査が必要とされるために司法審査になじまないとする審査不適合性については、非法的な判断に法的な審査を行うのが司法審査であり 73 、法の視点から望ましい解釈を検討するのは司法や法学の役割と言える。③生存権実現の方法が憲法からは明らかでないとの作為方法不特定性については、法的な視点から作為方法を特定するのが困難であるにしても、作為方法を他の視点を導入して明らかにすることは可能である。COVID-19対策には公衆衛生の視点が必要であるが、専門家の見解を参照しつつ、憲法における生存権が保障されているかを法的に検討することは、可能でありかつ望ましい。④生存権保障のためには財政民主主義のもと立法府が策定する予算が必要であるため、司法のみで生存権保障のための判断はできないとする予算随伴性については、生存権保障のためには予算が必要な場合もあるものの、少なくとも生存権保障のために必要な手段を法的に検討する際には予算を考慮に入れるべきでない。また、例えば営業や移動の自由の制限など、必ずしも予算を必要としない手段による生存権の保障及び公衆衛生の保全も考えられる 74 。さらに、予算への影響を検討することが「過剰な自己抑制」であり、「司法部の政治部門に対する介入になる」との痛烈な批判もなされている 75 。よって、生存権の内容を法学・司法が具体化し、憲法を基盤とした具体的請求権が認められるべきである。なお、従来では生活保護などの給付請求権が議論されてきたが、生存権保障の方策は給付に限らない。憲法 25 条第 2 項は、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定しており、「公衆衛生の向上及び増進」のために必要な方策を請求することも、憲法 25 条に基づき可能なはずである。上記の請求がなされた際には、公衆衛生の保持を目的とした個人の自由の制限が正当化されうる。COVID-19対策として、営業や移動の自由の制限が有効であると考えられる際には、こうした措置を採ることが生存権の視点から求められる可能性がある。

第三に、憲法 13 条に規定される「公共の福祉」は、個人の自由を制限する根拠となる。同条は、国民の権利が「公共の福祉に反しない限り、(中略)最大の尊重を必要とする」と規定しており、公共の福祉に適合しない場合、自由・人権が制限されうる。判例は公衆浴場法事件や薬局距離制限事件等を通して、公共の福祉概念に国民の保健・環境衛生が含まれるとしてきた 76 。また学説も、他者の権利・利益確保の文脈で、公衆衛生が公共の福祉に含まれるとしており 77 、これは妥当な見解であろう。よって、公衆衛生の保全を目的とする COVID-19 対策は公共の福祉に含まれ、個人の自由の制限が正当化されうる。なお日本には、感染力が低いと認識されていたにもかかわらず、公共の福祉の名の下にハンセン病患者の隔離が行われた歴史があり 78 、公共の福祉と感染症の関係性については慎重な検討が必要である。

IV. COVID-19 対策への適用

以上では、日本国憲法における個人の自由を保障する概念及び個人の自由を制限しうる概念を紹介した。本節ではそれぞれの概念を COVID-19 対策に適用し、COVID-19 対策のための自由の制限が認められるかを検討する。

まず、営業の自由、移動の自由を制限しうる要請・指示・命令が憲法上認められるかを検討する。営業の自由及び移動の自由は、居住、移転及び職業選択の自由を規定する憲法 22 条、財産権を規定する 29 条、人格権を規定する 13 条が主に関連している。これらの権利は公共の福祉の制約を受けるが、権利の性質により制約の程度が異なる。判例、通説では、精神的自由についてはより厳格な基準で、経済的自由についてはより緩やかな基準で公共の福祉を捉える、「二重の基準」論が有力になっている 79 。本稿では、試論的に従来の「二重の基準」論を発展させ、権利の性質でなく他者の人権の制約度合いを基盤として制約を検討する「二重の基準」論を採用する。制約度合いが小さい場合には厳格な基準で公共の福祉を捉え、他者の人権の制約度合いが大きい場合には緩やかな基準で公共の福祉を捉える。一般的に、精神的自由は他者の人権の制約度合いが小さく、経済的自由は他者の人権の制約度合いが大きい傾向にあると考えられるため、従来の「二重の基準」論と同様に、精神的自由についてはより厳格な基準で、経済的自由についてはより緩やかな基準で公共の福祉を捉える事になる。しかし、他者の人権の制約度合いが大きい場合には精神的自由であっても緩やかな基準で公共の福祉を捉え、他者の人権の制約度合いが小さい場合には経済的自由であっても厳格な基準で公共の福祉を捉えることで、人権保障のためのCOVID-19対策を検討することができる。

営業の自由及び移動の自由の根拠となる居住、移転及び職業選択の自由や財産権は経済的自由に含まれると考えられる 80 。よって、緩やかな基準で公共の福祉を捉え、一定程度の営業の自由及び移動の自由の制約が許容される。

なお、営業の自由及び移動の自由の基盤を精神的自由である人格権の一部として位置付け、従来の「二重の基準」を適用すれば、公共の福祉がより厳格に捉えられ、COVID-19 対策よりもこれらの自由が優先されるとの議論もありうる。しかし、COVID-19 対策のための営業の自由及び移動の自由の制約は正当化されるべきである。営業の自由及び移動の自由が、基盤的な権利である生命権保障の障害となりうるからである。司法も、営業の自由と「人格的価値」との関係性を認めた薬事法違憲判決では、営業の自由と人格的価値としての関連性に言及した後に、職業は「社会的相互関連性が大きい」ため、「公権力による規制の要請がつよ」いとしている 81 。これは精神的自由であっても社会的影響を十分に考慮すべきことを裁判所も認めていることを示す。また、COVID-19 の特性も検討する必要がある。従来、個人の移動による他者の人権の制約度合いについては十分に検討されてこなかった。しかし COVID-19 には無症状者が存在し、感染者が明らかでない。そのため、効果的な COVID-19 対策のためには、感染確認者のみでなく、市民一般を対象とした移動の制限が必要になる可能性がある。移動を制限するためには営業の自由への制限も効果的であろう。よって、COVID-19 対策としての営業の自由及び移動の自由の制限は許容される。

その上で、生命権、生存権・公衆衛生の視点を基盤とすれば、COVID-19 による生命へのリスクを減らす方策を国家が採る必要がある。特に生命権は人権の基盤であるため、本質的にその保障が最も重要である。よって、自由を制限したとしても公衆衛生の保全による生命権、生存権の保障が必要である。2021 年 8 月時点で新型コロナウイルス感染症対策分科会は、特に感染拡大が懸念される東京都に関して、同年7 月前半に比べて人出を半減するように要請する提言を行った 82 。COVID-19 に有効なワクチン接種を加速化させることも生命権保障のためには重要であるが、変異ウイルスにはワクチンの効果が低く、重症化のリスクがあるとの指摘もあることから 83 、COVID-19 対策には休業や営業時間短縮の要請・命令及び外出自粛要請・外出制限等の措置が必要となるであろう 84 。2021 年 8 月時点で生命権への脅威となる感染拡大が止まらない中、科学的知見に依拠したさらに有効な手段による感染拡大の予防が求められている。

最後に、罰則を伴う措置について補完的に検討する。本研究の主眼ではないため、詳細は今後の研究課題とするが、論点整理のための検討を行う。2021 年 2 月の特措法改正以降、緊急事態宣言もしくは重点措置の際に、休業や営業時間短縮の命令を違反した者には過料を課すことが可能になったが、日本国憲法は罰則のある外出制限、休業や営業時間短縮の措置を許容していると考えられる 85 。COVID-19 対策が生命権保障のために有効であり、公共の福祉に適合すれば、罰則を禁止する根拠を見いだすことは困難だからである。よって、例えば都市封鎖も現行憲法において可能であると言える。とはいえ、罰則のある外出制限、休業や営業時間短縮の措置が生命権保障のために必要な状況でなければ、憲法はこれらの措置を求めているわけでもなく 86 、罰則の有無は立法府の判断に委ねられている。罰則を導入する際には、行政法における比例原則を考慮する必要がある。比例原則の内容として、目的適合性の原則、必要性の原則、狭義の比例性の原則が挙げられる 87 。よって罰則は必要最小限で、かつ法益に与える影響が不釣り合いであってはならない 88 。2021年8月時点では、まん延防止等重点措置の際には営業時間短縮の命令に違反した場合に20万円の過料、緊急事態宣言の際には休業の命令に違反した場合に30万円の過料が課せられうる。この比例原則に照らした評価は今後の課題としたい。

おわりに

本稿は、COVID-19 対策に関わる憲法上の論点を「個人の自由を保障する概念」及び「個人の自由を制限しうる概念」に整理し直した上で、COVID-19 対策が公共の福祉に適合すると捉えられ、特措法に基づく休業や営業時間短縮の要請・命令、外出自粛要請に憲法上の制約はないと論じた。その上で、生命権・生存権の議論を基盤として、国家による積極的な COVID-19 対策が求められると述べた。また、比例原則を考慮する必要はあるものの、憲法は罰則のある措置を許容しているとまとめた。

最後に今後の検討課題として、2021 年 2 月に導入された罰則の意義と、ポスト・コロナ時代の国家観と憲法を挙げる。第一に、罰則導入の意義についてである。2020 年 12 月には、営業時間短縮の要請を遵守する事業者が限定されているとの報告があり、特措法改正時の論点は、罰則導入により休業もしくは営業時間の短縮が徹底されるか、であった 89 。しかし、2021年8月の現状を踏まえると、罰則の有無以上に、社会による政府の対策の受け止め方が対策の実効性確保のために重要であると考えられる。2021 年 8 月時点で発出されている緊急事態宣言や重点措置の効果についてNHKが実施した調査では、69%が「あまりない」もしくは「まったくない」と回答した 90 。効果がないとの評価は、緊急事態宣言や重点措置の際の要請や命令への罰則が不十分であるという認識による可能性もあるが、政府の対策への社会的信頼が失われている可能性も指摘できる 91 。実効性を確保できない場合には罰則の意義は薄れ、今後政府への社会的信頼を取り戻すことも、有効な対策のために求められる。

第二に、ポスト・コロナ時代の国家観と憲法について検討する必要がある。従来日本の憲法学は、大日本帝国憲法下の経験から自由の制限に抑制的な立場をとってきた 92 。また特措法も、2012 年の成立以降 2021 年 2 月の改正に至るまで、罰則規定が不在であった。これらの前提には、国家の権限強化への警戒感がある 93 。日本国憲法及びその解釈を行う憲法学は第二次世界大戦の経験を踏まえ、他国等の「敵」を想定せず、国家の権限強化に抑制的だったのである 94 。しかし COVID-19 は、この国家観に変化をもたらす可能性がある。感染症という自然環境の影響がある問題に直面している中、生命権保障のためには国家による積極的な COVID-19 対策が求められる。また、国民が国家の権限強化を求める動きがあることも指摘すべきである。2020 年 6 月に NHK が実施した世論調査では、62% が外出禁止や休業を強制できる法改正が必要であると回答した 95 。また 2021 年 1 月に NHK が実施した世論調査では、48% が特措法への罰則の明記に賛成と回答しており 96 、罰則のある措置に肯定的な意見が一定数あることを示している 97 。政府への社会的信頼が下がっていると考えられる2021年8月時点での世論は不明であるが、感染症が社会の脅威になることで、国家への権限強化を求める見解が出ていることは重要な点であろう。国家に強力な権限を認めることには全体主義につながるとの懸念があり 98 、国民が国家による罰則を望む現象が、近代立憲主義の視点から危険視されるのは当然である 99 。しかし、新型コロナウイルスを含む新興の人獣共通感染症は増加傾向にあると指摘されており 100 、今後も日本社会は感染症と向き合う必要がある 101 。また、今後気象の極端現象が頻繁に発生するとの指摘があり 102 、自然環境に対する社会の向き合い方も問われている。全体主義の歴史に学び、政治による恣意的な権力の集中を避けつつ、国家が生命権を保障し自然環境という「敵」の脅威に対応するために必要な措置を検討する必要がある。重要なのは、日本国憲法が従来想定してこなかった感染症や自然環境の問題が日本社会への脅威となっていることである。COVID-19 等感染症対策における「敵」はウイルスであり、科学的な専門知により根拠づけられる 103 。憲法(学)が必ずしも想定してこなかった新たな、かつ人間社会に与える影響が巨大な「敵」が出現する中で、憲法(学)が描く国家観を今後再検討する必要がある 104

COVID-19 は、社会に大規模かつ長期化する感染症と向き合うことを迫っており、日本国憲法にとって新たな課題である。憲法の枠組みに基づき法的な検討を行うとともに、日本社会の特性も考慮した有効な感染症対策により生命権を保障する、新たな国家観を構想していく必要がある。

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Akiyama H. COVID-19 measures and human rights guaranteed by the Japanese Constitution [version 2; peer review: 2 approved] F1000Research 2021, 10:230 (https://doi.org/10.12688/f1000research.50861.2)
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PUBLISHED 14 Sep 2021
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Reviewer Report 24 Sep 2021
Hajime Yamamoto, Keio University, Tokyo, Japan 
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第1版と比べて、より筆者の立場が明確になったと思われる。筆者の取り上げたテーマは、極めてプラクティカルな問題から、抽象的な憲法解釈の定式化のあり方まで、多様な問題が含まれており、今後はそれらを分節化した上で、さらにそれぞれの論点について考察を進めて欲しい。評者としては、すでに第1版に関して指摘したように、<しっかりと生命権利益が包含された公共の福祉による移動の自由の制約>として論点を構成した場合と、<生命権 ... Continue reading
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Yamamoto H. Reviewer Report For: COVID-19 measures and human rights guaranteed by the Japanese Constitution [version 2; peer review: 2 approved]. F1000Research 2021, 10:230 (https://doi.org/10.5256/f1000research.76767.r94194)
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  • Author Response 01 Oct 2021
    Hajime Akiyama, Faculty of Humanities and Social Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba, 305-8571, Japan
    01 Oct 2021
    Author Response
    山元先生

    査読コメントをいただき、ありがとうございます。

    本論文では、COVID-19やその対策に関連する憲法上の論点を検討したために、一般理論的な問題と個別具体的な問題の双方を扱いました。

    ご指摘の通り、一般理論的な検討を行った上で議論を深めるべき点が多くございますので、今後の課題とさせていただきます。

    今後の研究課題につながるコメントをいただきましたことに、重ねて御礼申し上げます。
    Competing Interests: No competing interests were disclosed.
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  • Author Response 01 Oct 2021
    Hajime Akiyama, Faculty of Humanities and Social Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba, 305-8571, Japan
    01 Oct 2021
    Author Response
    山元先生

    査読コメントをいただき、ありがとうございます。

    本論文では、COVID-19やその対策に関連する憲法上の論点を検討したために、一般理論的な問題と個別具体的な問題の双方を扱いました。

    ご指摘の通り、一般理論的な検討を行った上で議論を深めるべき点が多くございますので、今後の課題とさせていただきます。

    今後の研究課題につながるコメントをいただきましたことに、重ねて御礼申し上げます。
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Reviewer Report 22 Sep 2021
Masahiro Sogabe, Graduate School of Law, Kyoto University, Kyoto, Japan 
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第1稿に対するコメントを踏まえ、一定程度の改善はなされたと考える。とりわけ、先行業績への言及や生存権に関する従来の学説に関する指摘には一定の対応がなされている。
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Sogabe M. Reviewer Report For: COVID-19 measures and human rights guaranteed by the Japanese Constitution [version 2; peer review: 2 approved]. F1000Research 2021, 10:230 (https://doi.org/10.5256/f1000research.76767.r94193)
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  • Author Response 01 Oct 2021
    Hajime Akiyama, Faculty of Humanities and Social Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba, 305-8571, Japan
    01 Oct 2021
    Author Response
    曽我部先生

    査読コメントをいただき、ありがとうございます。

    「個人の自由を保障する概念」と「個人の自由を制限しうる概念」を対置して分析することの意義につきましては、今後学界の先生方と議論させていただきたいと考えております。
    また、COVID-19対策の諸措置の合憲性の検討についても、今後検討してまいります。

    今後の研究課題につながるコメントをいただきましたことに、重ねて御礼申し上げます。
    Competing Interests: No competing interests were disclosed.
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  • Author Response 01 Oct 2021
    Hajime Akiyama, Faculty of Humanities and Social Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba, 305-8571, Japan
    01 Oct 2021
    Author Response
    曽我部先生

    査読コメントをいただき、ありがとうございます。

    「個人の自由を保障する概念」と「個人の自由を制限しうる概念」を対置して分析することの意義につきましては、今後学界の先生方と議論させていただきたいと考えております。
    また、COVID-19対策の諸措置の合憲性の検討についても、今後検討してまいります。

    今後の研究課題につながるコメントをいただきましたことに、重ねて御礼申し上げます。
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PUBLISHED 23 Mar 2021
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Reviewer Report 26 Apr 2021
Masahiro Sogabe, Graduate School of Law, Kyoto University, Kyoto, Japan 
Approved with Reservations
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本論文は、「COVID-19 対策としての休業や営業時間短縮の要請・指示及び外出自粛要請に、憲法上の制約もしくは要請はあるか」をリサーチクエスチョンとして、憲法学の通説に対する批判も交えつつ、この問いに取り組んでいる。

本査読者の全般的な評価は、基本的にはすでに査読コメントを残している山元教授と同様であるが、以下の4点について特に指摘しておきたい。

第1に、筆者は、「公共の福祉」対「個人の人権」という通説的な問題の捉え方に代えて、「個人の自由を保障する概念」対「個人の自由を制限しうる概念」という捉え方を用いるべきだとする。しかし、通説も、「公共の福祉」は抽象的な概念ではなく、具体的な対抗利益を明確にし、その都度の「公共の福祉」の内実を明らかにすべきことを要求しているのであるから、こうした問題設定の修正が何をもたらすのかは明らかではない。

第2に、筆者は、生存権が具体的な権利であることを強調するが、そこで指摘されている論拠は通説も織り込み済みのものであるはずであり、にもかかわらず通説が抽象的権利説(その内実にも実は注意が必要であるが)にとどまっている理由を乗り越えることができていない。また、本論文の主題との関係で、生存権が具体的権利であるとすることによっていかなる帰結をえようとしているのか、明らかでない。
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Sogabe M. Reviewer Report For: COVID-19 measures and human rights guaranteed by the Japanese Constitution [version 2; peer review: 2 approved]. F1000Research 2021, 10:230 (https://doi.org/10.5256/f1000research.53950.r83082)
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  • Author Response 14 Sep 2021
    Hajime Akiyama, Faculty of Humanities and Social Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba, 305-8571, Japan
    14 Sep 2021
    Author Response
    曽我部先生

    重要なコメントをいただき、感謝いたします。

    第一に「公共の福祉」と「個人の人権」の分類を、「個人の自由を保障する概念」及び「個人の自由を制限しうる概念」に整理し直す意義についてコメントをいただきました。新たな分類を構想した背景には、「公共の福祉」と「個人の人権」の分類では、人権概念の十全な理解が困難なのではないかとの問題意識があります。人権と自由はほぼ同一視されてきた傾向がありますが、人権を十分に理解するためには、自由権だけでなく、社会権も含めて人権を捉える必要があると考えております。感染症対策との関連では、自由の制限を人権の制約原理と捉えられる公共の福祉でなく、憲法の一義的な価値である人権の一部として位置付けることも可能であるはずです。こうした新たな捉え方により、自由を相対化し、人権のより深い理解を目指したいと考えております。

    第二に、具体的権利説への批判を乗り越えることができていないとのご指摘をいただきました。第2版では、抽象的権利説から具体的権利説に投げかけられている批判を踏まえ、具体的権利説の妥当性を論じました。COVID-19対策との関連では、具体的権利説により、営業や移動の自由の制限が感染対策に有効であれば、こうした措置を採ることが生存権の視点から求められる可能性があると考えています。

    第三に、本論文を基盤とした具体論の展開についてコメントをいただきました。生命権や生存権の具体的権利説を基盤とすれば、感染拡大が止まらない中、科学的知見に依拠したさらに有効な手段による感染拡大の予防が求められると考えております。しかし、2021年2月の特措法改正により導入された罰則の評価など、十分に検討できていない様々な論点がございますので、今後の研究課題としてまいります。

    第四に、先行研究への言及が不十分であるとのご指摘をいただきました。十分に整理できておりませんでしたので、第1版脱稿後に発表された論文も含め勉強させていただき、本論文との関連を検討いたしました。

    上記の論点を踏まえ、第2版を執筆いたしました。
    貴重なコメントを頂き、ありがとうございました。
    Competing Interests: No competing interests were disclosed.
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  • Author Response 14 Sep 2021
    Hajime Akiyama, Faculty of Humanities and Social Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba, 305-8571, Japan
    14 Sep 2021
    Author Response
    曽我部先生

    重要なコメントをいただき、感謝いたします。

    第一に「公共の福祉」と「個人の人権」の分類を、「個人の自由を保障する概念」及び「個人の自由を制限しうる概念」に整理し直す意義についてコメントをいただきました。新たな分類を構想した背景には、「公共の福祉」と「個人の人権」の分類では、人権概念の十全な理解が困難なのではないかとの問題意識があります。人権と自由はほぼ同一視されてきた傾向がありますが、人権を十分に理解するためには、自由権だけでなく、社会権も含めて人権を捉える必要があると考えております。感染症対策との関連では、自由の制限を人権の制約原理と捉えられる公共の福祉でなく、憲法の一義的な価値である人権の一部として位置付けることも可能であるはずです。こうした新たな捉え方により、自由を相対化し、人権のより深い理解を目指したいと考えております。

    第二に、具体的権利説への批判を乗り越えることができていないとのご指摘をいただきました。第2版では、抽象的権利説から具体的権利説に投げかけられている批判を踏まえ、具体的権利説の妥当性を論じました。COVID-19対策との関連では、具体的権利説により、営業や移動の自由の制限が感染対策に有効であれば、こうした措置を採ることが生存権の視点から求められる可能性があると考えています。

    第三に、本論文を基盤とした具体論の展開についてコメントをいただきました。生命権や生存権の具体的権利説を基盤とすれば、感染拡大が止まらない中、科学的知見に依拠したさらに有効な手段による感染拡大の予防が求められると考えております。しかし、2021年2月の特措法改正により導入された罰則の評価など、十分に検討できていない様々な論点がございますので、今後の研究課題としてまいります。

    第四に、先行研究への言及が不十分であるとのご指摘をいただきました。十分に整理できておりませんでしたので、第1版脱稿後に発表された論文も含め勉強させていただき、本論文との関連を検討いたしました。

    上記の論点を踏まえ、第2版を執筆いたしました。
    貴重なコメントを頂き、ありがとうございました。
    Competing Interests: No competing interests were disclosed.
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Reviewer Report 07 Apr 2021
Hajime Yamamoto, Keio University, Tokyo, Japan 
Approved
VIEWS 176
本論文は、Covid-19の感染拡大に対応して「新インフルエンザ等対策特別措置法」に基づいて行われた政府による様々な要請や指示を、「憲法の枠組み」で捉えたとき、従来の枠組が不十分だと著者が評価する部分を摘示し、よりよい、と本論文著者が考える憲法学の枠組を提供しようとするものである。

Covid-19をめぐる問題は、憲法学にとっても最新かつ最重要な諸問題を提起しており、本論文はこのような課題に迅速に応えて執筆されたものである。

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Yamamoto H. Reviewer Report For: COVID-19 measures and human rights guaranteed by the Japanese Constitution [version 2; peer review: 2 approved]. F1000Research 2021, 10:230 (https://doi.org/10.5256/f1000research.53950.r82364)
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  • Author Response 21 Apr 2021
    Hajime Akiyama, Faculty of Humanities and Social Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba, 305-8571, Japan
    21 Apr 2021
    Author Response
    山元先生

    有益なご指摘をいただき、感謝申し上げます。

    第一に、生命権や生存権を「個人の自由を制限しうる概念」と捉えることについて、従来「公共の福祉」の利益と考えられてきた概念を「人権」という言葉に言い換えたにすぎないと指摘される可能性をお示しいただきました。筆者は、まさにこの捉え方の変化にこそ大きな意味があると考えております。従来「人権≒自由」と捉えられてきたように思いますが、自由以外の人権の側面を改めて示すことで、山元先生も言及されているように「従来の近代立憲主義的人権概念を乗り越え」る、新たな人権概念を構想する基盤となると存じます。そのため、「個人の自由を制限しうる概念」を「人権」概念に組み込むことには一定の意味があると考えております。

    第二に、人権が個人の自由保障と自由制限双方の正反対な機能を含むと捉えることにより、人権概念が不安定になるとの批判を受ける可能性をご指摘いただきました。筆者は、COVID-19という自然の脅威により、自由を基盤とする従来の人権概念の限界が明らかになっていると考えており、人権の捉え直しが必要であると考えています。そのため、人権概念が不安定になる可能性はありますが、新たな人権概念を検討することで、より包括的な人権概念を構築することができると考えます。

    第三に、前半部分で人権概念の大転換を主張しているのにもかかわらず、後半部分における具体的な考察は、従来の憲法学と大きく変わらないのではないか、とのご指摘をいただきました。本論文の主眼は、日本国憲法の条文を基盤として自由と人権の概念を切り離し、人権概念を捉え直すことにありました。そのため、合憲性判定に関する基準や原則については十分に検討できておりません。人権概念の捉え直しにより、これらの基準や原則を捉え直す必要があるかについては慎重な検討が求められるように思いますが、今後の検討課題とさせていただきます。

    第四に、COVID-19対策とテロ対策は同様に捉えられるか、との論点をご提示いただきました。「おわりに」にも記述しているとおり、本論文は感染症対策における「敵」が、科学的な専門知により認定される自然であると捉えています。従来は、政治的判断が不可避となる人間集団(国家やテロリストを含む)が「敵」として想定されており、COVID-19対策とテロ対策は本質的に異なると考えます。そして、従来想定されてこなかった自然が新たな「敵」となっているため、新たな人権理解の必要性を論じております。テロ対策の捉え方については、今後検討を重ねて参ります。

    第五に、社会的プレッシャーの評価について言及していただきました。この点については、COVID-19対策に法の役割を見出すならば、社会的プレッシャーについては否定的な立場を取らざるを得ません。社会的プレッシャーに法や司法が対応できる余地は限定的だからです。法や司法の意味は、規範が事前に示され、司法による救済の可能性があることだと考えます。社会的プレッシャーについてはこうした法の効果が十分に見込めないため、少なくとも理論的には望ましくありません。とはいえ、曽我部教授、江藤教授の議論にもあるように、日本の社会的現状を踏まえた上で望ましいあり方を模索するのは、極めて重要です。その一方で今後も様々な社会問題が起きる中で、法や司法が十分に役割を果たせる基盤を構築する必要があると感じております。具体的な方法や、その妥当性については大きな論点となりますので、今後の課題とさせてください。

    ご指摘いただきました論点につきましては、今後の論文執筆の参考にさせていただきます。
    貴重なコメントを頂き、ありがとうございました。
    Competing Interests: No competing interests were disclosed.
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  • Author Response 21 Apr 2021
    Hajime Akiyama, Faculty of Humanities and Social Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba, 305-8571, Japan
    21 Apr 2021
    Author Response
    山元先生

    有益なご指摘をいただき、感謝申し上げます。

    第一に、生命権や生存権を「個人の自由を制限しうる概念」と捉えることについて、従来「公共の福祉」の利益と考えられてきた概念を「人権」という言葉に言い換えたにすぎないと指摘される可能性をお示しいただきました。筆者は、まさにこの捉え方の変化にこそ大きな意味があると考えております。従来「人権≒自由」と捉えられてきたように思いますが、自由以外の人権の側面を改めて示すことで、山元先生も言及されているように「従来の近代立憲主義的人権概念を乗り越え」る、新たな人権概念を構想する基盤となると存じます。そのため、「個人の自由を制限しうる概念」を「人権」概念に組み込むことには一定の意味があると考えております。

    第二に、人権が個人の自由保障と自由制限双方の正反対な機能を含むと捉えることにより、人権概念が不安定になるとの批判を受ける可能性をご指摘いただきました。筆者は、COVID-19という自然の脅威により、自由を基盤とする従来の人権概念の限界が明らかになっていると考えており、人権の捉え直しが必要であると考えています。そのため、人権概念が不安定になる可能性はありますが、新たな人権概念を検討することで、より包括的な人権概念を構築することができると考えます。

    第三に、前半部分で人権概念の大転換を主張しているのにもかかわらず、後半部分における具体的な考察は、従来の憲法学と大きく変わらないのではないか、とのご指摘をいただきました。本論文の主眼は、日本国憲法の条文を基盤として自由と人権の概念を切り離し、人権概念を捉え直すことにありました。そのため、合憲性判定に関する基準や原則については十分に検討できておりません。人権概念の捉え直しにより、これらの基準や原則を捉え直す必要があるかについては慎重な検討が求められるように思いますが、今後の検討課題とさせていただきます。

    第四に、COVID-19対策とテロ対策は同様に捉えられるか、との論点をご提示いただきました。「おわりに」にも記述しているとおり、本論文は感染症対策における「敵」が、科学的な専門知により認定される自然であると捉えています。従来は、政治的判断が不可避となる人間集団(国家やテロリストを含む)が「敵」として想定されており、COVID-19対策とテロ対策は本質的に異なると考えます。そして、従来想定されてこなかった自然が新たな「敵」となっているため、新たな人権理解の必要性を論じております。テロ対策の捉え方については、今後検討を重ねて参ります。

    第五に、社会的プレッシャーの評価について言及していただきました。この点については、COVID-19対策に法の役割を見出すならば、社会的プレッシャーについては否定的な立場を取らざるを得ません。社会的プレッシャーに法や司法が対応できる余地は限定的だからです。法や司法の意味は、規範が事前に示され、司法による救済の可能性があることだと考えます。社会的プレッシャーについてはこうした法の効果が十分に見込めないため、少なくとも理論的には望ましくありません。とはいえ、曽我部教授、江藤教授の議論にもあるように、日本の社会的現状を踏まえた上で望ましいあり方を模索するのは、極めて重要です。その一方で今後も様々な社会問題が起きる中で、法や司法が十分に役割を果たせる基盤を構築する必要があると感じております。具体的な方法や、その妥当性については大きな論点となりますので、今後の課題とさせてください。

    ご指摘いただきました論点につきましては、今後の論文執筆の参考にさせていただきます。
    貴重なコメントを頂き、ありがとうございました。
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