日本薬理学雑誌
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Caeruleinの腸管運動に対する作用
中村 宣雄塩崎 静男小嶋 哲夫清水 源昭田中 正生
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1977 年 73 巻 7 号 p. 743-756

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抄録

Caeruleinの腸管運動に対する作用を,neostigmine,pantethine,prostaglandin E1(以下PGE1)およびprostaglandin F(以下PGF)と比較検討し以下の成績を得た.(1)生体腸管筋電図放電(麻酔下ウサギ)に対する影響をみると,caeruleinはneostigmineの約1/100の用量で放電活動の活性化をおこした.小腸の感受性が大腸よりも高かった.PGE1は小腸の放電活動を抑制,PGFは活性化するが,ともに結腸放電は抑制,直腸の放電については活性化を示した.Atropineの影響をみると,neostigmine,pantethincの作用は完全に抑制をうけたが,caeruleinによる放電の活性化は減弱がみられるが完全に抑制されることはなかった.(2)腸管輸送能(マウス)に対しては,caeruleinはneostigmincの約30倍の強い充進作用を示した.Caeruleinの高用量の投与においては輸送能充進の減弱が認められた.この充進減弱作用は,reserpineあるいはphentolamineとpropranololの前処置の実験からcatecholamineの遊離作用によることが示唆された.手術後の腸管運動麻痺のモデルとして盲腸摘出マウスの腸管輸送能に対する作用を調べたが,caeruleinは正常マウスの約30倍の用量で元進作用をおこした.(3)摘出腸管標本(ウサギ)において,回腸の運動冗進作用はPGFがもっとも強くついでcaerulein,PGE1,neostigmineの順であった.結腸に対してはPGF,PGE1は回腸よりも低い用量で運動充進をおこした.ついでcaeruleinの充進作用が強いが,その最小有効濃度は回腸の場合の約10倍であった.(4)Caeruleinは瞳孔径(マウス),摘出気管(ウサギ)にほとんど影響を与えなかった.Neostigmineは腸管運動充進の閾値とちかい用量で縮瞳,摘出気管の収縮をおこした.以上caeruleinは,強い腸管運動充進作用を有し,腸管運動機能低下にも効果を示した.感受性については,小腸の方が大腸よりも高かった.Caeruleinは,コリン作動性薬物がもつ縮瞳,,気管収縮作用をほとんど示さなかった.

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