日本薬理学雑誌
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特集 蛍光バイオセンサー研究の最前線:分子設計,生体機能の解明から創薬への展望
高い細胞内滞留性を有する光機能性プローブ群の開発
河谷 稔神谷 真子浦野 泰照
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2024 年 159 巻 1 号 p. 18-24

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抄録

酵素活性を高感度に検出可能な有機小分子蛍光プローブは,マーカー遺伝子発現の可視化や標的酵素が高発現するがん部位の特異的イメージングが可能な一方で,酵素反応後に生成する蛍光性分子が反応部位から拡散・消失してしまうため,長時間の追跡や洗浄・固定操作を伴う免疫染色を併用した観察が難しい場合があった.著者らの研究グループはキノンメチド化学に着目し,酵素によって基質部位が加水分解されると,キノンメチド或いはアザキノンメチド中間体を経由して細胞内に存在するタンパク質やグルタチオンなどの求核剤と反応するとともに,大幅な蛍光上昇を示す細胞内高滞留性activatable型蛍光プローブの分子設計を確立した.この分子設計に基づき,β-galactosidaseやγ-glutamyltranspeptidaseを標的酵素とした蛍光プローブ開発の他,activatable型光増感剤やケージド蛍光色素といった光機能性プローブへの展開も行ってきた.これらのプローブは標的酵素が発現している細胞からの漏出が抑制されるため,標的細胞を高い選択性で可視化・殺傷することができるだけでなく,洗浄・固定操作後も十分な蛍光が観察できることを活かして免疫染色との併用も可能であることを示した.

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