日本薬理学雑誌
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疾患バイオマーカー研究の新展開
アンサンブル学習によるスギ花粉症の治療効果を判定する血清バイオマーカーセットの同定
神沼 修後藤 穣中谷 明弘大久保 公裕廣井 隆親
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2015 年 146 巻 5 号 p. 259-262

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抄録

アレルゲン免疫療法は,アレルギー患者の根治も望める有望な治療法であるが,効果を発揮するのに数年間を要する場合がある.従って,その治療効果が望めない患者を治療初期に判別できれば,無駄な治療を長年施さずに済む.我々は,それを可能にするバイオマーカーを探索するため,スギ花粉症を対象とした舌下免疫療法(sublingual immunotherapy:SLIT)の臨床研究を実施した.2年間の治療により,73%の患者に効果がみられたのに対し,27%の患者には完全に無効であった.そこで,著効群および無効群患者を抽出し,治療経過に伴う血清パラメータの変動を網羅的に解析したところ,著効群/無効群間で明らかな相違がみられるものは見いだされなかった.しかしながら,それら複数のパラメータをアンサンブル学習で統合的に解析したところ,15種類のサイトカイン測定データを利用すれば,著効群/無効群を高精度で判別できることが明らかとなった.今後,この解析手法にさらに改良を加え,SLITを実施する前に,その治療効果を予測できる検査法の開発に結びつけてゆきたい.

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© 2015 公益社団法人 日本薬理学会
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