日本薬理学雑誌
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実験技術
網膜血管新生阻害作用のIn vitroおよびIn vivo評価系
力石 裕一嶋澤 雅光原 英彰
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2007 年 129 巻 6 号 p. 451-456

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抄録

糖尿病網膜症や未熟児網膜症などの網膜血管新生疾患は硝子体内に病的な血管新生が進展することにより不可逆的な視野欠損や失明を引き起こす.そこで本稿では,網膜血管新生阻害作用を検討するためのin vitroおよびin vivo評価系を紹介する.In vitro評価系はヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)とヒト線維芽細胞の共培養系によるHUVEC管腔形成能を指標としたモデルである.本モデルはvascular endothelial growth factor(VEGF)-Aにより管腔形成を促進する.In vivo評価系は網膜血管新生疾患の病態モデルとして汎用されているマウス高酸素負荷網膜血管新生モデルである.C57BL/6生後7日目(P7)マウスを高酸素条件下(75% O2)でP12まで飼育し,その後大気圧条件下(21% O2)に戻してP17まで飼育することにより網膜血管新生を惹起した.網膜血管を可視化するため,FITC-dextranを全身灌流し,眼球摘出後,網膜フラットマウント標本を作製した.また,本モデルの新規評価法として網膜全体を網羅した画像解析ソフトによる定量法を確立した.本評価法は作製した網膜フラットマウント標本を高感度CCDカメラを用いて取得し,正常網膜血管P7からP17において網目状に網膜血管が成熟していく過程を定量的に捉えることができる.また,高酸素負荷処理P17網膜でのみ,高酸素負荷によって特異的に生じた網膜症様症状(異常な血管新生)を定量的に捉えることもできる.本稿で紹介するin vitroおよびin vivo評価系は,簡便で再現性の高い評価系であり,網膜血管新生疾患に対する様々な化合物の薬効評価に適している.また画像解析ソフトを用いた定量法は網膜血管構造を詳細に評価でき,マウス高酸素負荷網膜血管新生モデルの新たな評価法として有用である.

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