2004 年 124 巻 4 号 p. 235-243
Gタンパク質共役型受容体は細胞表面に存在し血液を介したアクセスが容易なこと,さらに受容体が多様性に富むために選択性を上げやすいことなどの点から,これまでに最も多くの薬の開発の対象となってきた.薬理作用の基本となる受容体の多様性は,受容体をコードする遺伝子の多様性とほぼ同じこととしてとらえられてきた.すなわち,受容体の多様性は遺伝子レベルで決定されると考えられてきたのである.しかしながら,mRNAが転写された後に修飾を受けゲノムにコードされているアミノ酸とは違ったアミノ酸になるRNA編集という機構が存在すること,また受容体がタンパク質に翻訳され細胞表面に移行した後,その受容体が同じあるいは異なる受容体と相互作用し新たな性質を持つ二量体を形成することも報告されている.生体内の環境を考えると,このようなポストトランスレーショナルな機構で生じる多様性も考慮しなければならなくなってきている.一方,受容体の多様性は,調節機構の違いのみならず細胞内での局在やシグナリングの違いにも反映されており,多様性の生理的な意義が明らかにされつつある.また,これまでほとんど注目されてこなかった細胞外のアミノ末端領域に特徴的な構造を示す受容体についても触れ今後の展望を述べる.