日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
インターロイキン1受容体を介した誘導型NO合成酵素発現機序
久山 哲廣猪本 美佳日置 由佳理福井 裕行
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 114 巻 supplement 号 p. 86-91

詳細
抄録

Protein kinase Cα(PKCα)に対するantisense-oligodeoxynucleotide(AS-PKCα)を培養血管平滑筋細胞(VSMC)にtransfectionし,PKCαをknockdownした状態で,インターロイキン1β(IL-1β)刺激による誘導型NO合成酵素(iNOS)遺伝子発現およびNF-κBの核内移行をそれぞれRT-PCR/Northern blot及びEMSA法を用いて観察した。また,PKCαの存在はWestern blot法を用いて検討した。AS-PKCαによるPKCαのknockdownはIL-1βによるiNOS遺伝子発現をほぼ50%抑制し,PKC阻害薬であるRo 31-8220を処置した場合は,iNOS遺伝子の発現はほぼ完全に抑制された。従ってiNOS遺伝子発現はPKC依存的であり,PKCαがその活性の約半分を担っていることが示唆された。一方,IL-1β刺激によりNF-κBは細胞質から核内へ移行することが確認された。VSMCにおけるNF-κBは,各種抗体を用いたsupershiftの実験により,p65及びp50のヘテロダイマーであった。iNOS遺伝子発現に対する作用とは異なり,IL-1βによるNF-κBの核内移行はAS-PKCαによるPKCαのknockdown,あるいはRo 31-8220処置により何ら影響を受けなかった。従って,NF-κBの核内移行はPKC非依存的であることが示唆された。
以上の結果より,IL-1β刺激によりNF-κBの核内移行が観察されたが,この反応はiNOS遺伝子発現とは異なり,PKCαおよびそれ以外のPKC isozymesによる調節を受けない,PKC非依存的な経路を介していると思われた。NF-κBがpromoter上のκBサイトに結合したのち,実際に転写活性を高める過程にPKCαが関与している可能性が考えられる。

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top