2014 年 40 巻 5 号 p. 443-448
余剰の生コンクリートとして発生する産業廃棄物であるコンクリートスラッジを原料として製造した脱リン材(PAdeCS®)を実験室スケールのアクリル製カラムに充填した装置にリン含有模擬排水を通じることによって流通系におけるリンの回収性能を評価した.模擬下水は,リン濃度100 mg-P/Lとし,初期pHを7とした.PAdeCS充填層への通水により,リン除去が行われ,流出液中のリン濃度は0.1 mg-P/L程度まで低下した.一定時間後に破過が見られ,破過までに処理可能な模擬排水の量は,PAdeCS充填層の層高が高いほど大きくなった.PAdeCSによる脱リンは溶出したカルシウムイオン,水酸化物イオンとリン酸イオンの反応によるヒドロキシアパタイト(HAP)の生成によるものと考えられた.充填層の場合,HAP生成はPAdeCS層への析出とバルク水中での結晶生成の二種類のメカニズムで起こることがわかった.これらのメカニズムによるリンの回収割合はPAdeCS層の層高,流量によって変化することがわかった.