粘弾性流体や複雑流体の流動特性は,数多くの研究者によって明らかにされてきた.しかしながら,その多くが,ポアズイユ流れに代表されるせん断流動を対象としており伸張流動を対象とした研究報告は少ない.その中でも,オリフィス流れを対象とした伸張流動において,ニュートン流体とされている流体においても弾性が発現するとの報告がある.本研究では,伸張流動の一つであるスリット流れを用いて,水,希薄高分子水溶液,界面活性剤水溶液のジェット推力と圧力損失を測定することでスリット流れにおける種々の液体の流動特性を明らかにした.その結果,従来の報告の通り,代表長さ68 μm以下のスリットにおいて,水がNavier–Stokes方程式による予測値よりも減少した.ジェット推力・圧力損失から算出した伸張応力は,おおむね同じ値を取り平均流速で整理することができ,傾きが約2.1となることを示した.界面活性剤水溶液は,活性剤の持つ極性により異なる結果となり,ジェット推力・圧力損失の値が陽イオン系<非イオン系<陰イオン系の順に予測値からの減少幅が大きくなった.これは固液界面の電気的効果によって引き起こされたと推察した.希薄高分子水溶液は粘弾性の効果により予測値から大幅に減少した.これは従来の報告と同じ結果となった.