症例は73歳女性。既往歴・家族歴に特記事項なし。平成7年6月11日夕食摂取後より胸部不快感,腹痛,嘔気,下痢が出現した後,吐血したため救急外来を受診した。緊急上部内視鏡検査を施行したところ,食道および胃に暗紫色に色調変化した巨大な粘膜の隆起を認め,内視鏡所見より粘膜下血腫と診断した。食道粘膜下血腫は,1957年にWilliamsが初めて報告して以来70症例報告されており,治療は内科的保存療法が主体で,予後は良好な疾患といわれている。本症例のように広範囲に及ぶ食道・胃粘膜下血腫は過去に報告がなく,内科的保存療法のみで順調に回復し,かつ上部内視鏡検査により粘膜下血腫が消失してゆく過程を経時的に追うことができた症例と思われたので報告した。